ケイトの、東京 ひとり旅の途中

東京に住まい、東京を旅して見えるもの。

帯が生まれ変わる

2016-09-14 08:13:30 | 想い出の仕舞い方
着物を着るようになって、20年ほどが経ちました。
ずいぶんと高い授業料を払い、多くの失敗を経験しながらの着物道でしたが、そのおかげで、ようやく自分に似合うもの、必要なものがわかってきたように思います。

母が他界して30年余り。
洋服でのおしゃれが大好きだった人なので、おそらく着物にはまったく興味がなかったと思うのですけれど、それでも昭和前半の生まれですから、ちょっとした礼装一式くらいは揃えていたようです。
もしかしたら、何度かあった引っ越しのときに、少しずつ処分してしまったものもあったのかも知れませんが。

寸法が合わないため、着ることもままならず、ずっと押入れの奥に仕舞い込んでいたほんのわずかな母の形見に、ようやく自分の判断で手を加えられるようになりました。
大人になると言うことは、こう言うことなのですね。

先日、新たに悉皆屋さんに染め替えをお願いしていた名古屋帯が、素敵な帯に生まれ変わって戻ってきました。

before:



この色!
今の感覚では、どうやったって使いこなせない色ですが、アルバムの中の母は、なんとこの帯を黒留袖に合わせて、妹である叔母の結婚式に参列していたようです。
これが、母の着物に対するセンスなのか、そんな時代だったのかは、もはや知る由もなし。

とにかく、母の着物一式の中で一番難関だったのはこの帯で、最後にはクラッチバッグにでもして、洋装で持とうかと思っていたものの、それさえ、使うシーンが思いつかず、二の足を踏んでいるところでした。

以前より、ご縁のあった十日町の悉皆屋さんの社長が、東京にお見えになると伺ったので、ダメ元で他の着物に交ぜて相談しに行きました。

「切ってしまうなんてもったいないよ。僕が綺麗な帯に染め直してあげるよ。」

社長の答えは予想に反したものでした。

では、信頼してお任せします。
と、色味もすべてお任せして仕上がってきたのがこちら。

after:



素敵〜❤️
あの強烈なオレンジ色を消すには、この色味しかないよ。と、長年のご経験から断言されていた社長。
それが今風の、しかも何にでも合わせやすそうな重宝な帯に仕上がってくるとは、素人の私には想像できませんでした。

ご参考までに、解いて洗って染め替えて、生地の弱くなった部分には布を足して、新しい帯に仕立てていただいた総額、およそ6万円。

着物を着ない方からみたら、ほらやっぱり高いじゃない。
着物を着る方からみたら、新しい帯を買うよりは安いわね。
と言ったところでしょうか?

当の本人としては、母が締めている写真がある帯(しかもお祝いの席で)が、自分の着物に合わせやすい帯になり、この先何十年も使える、大満足な仕立て直しとなりました。

日本のこの技術、みなさんに知っていただきたいと願っています。

十日町の悉皆屋さん
【洗いの匠】はこちら。
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http://arai-takumi.com/
(リンクがうまく貼れない。なぜ〜?