県道南線の日朗坂を登りきったところで左手に「慶宮寺」と書かれた看板が見えてくる。ここを左折してしばらく行くと、一ノ宮神社参道入り口を背にして建つ慶宮寺の赤いトタン屋根が見える。茅葺きにトタンを被せた屋根だそうで棟が高いのが特徴だ。迂回して山門を入ると、境内には苔が敷き詰められていて、朱塗りの屋根とのコントラストが大変見事だ。一ノ宮神社は、順徳上皇の第一皇女を祀っており、その別当寺ゆえ「慶宮」という名が付いたとされている。私がこのお寺で最も印象に残ったのは、本堂に続く住職様のお住まいである。床が丁寧に磨き上げられ、洒落た感じの古民家という佇まいであった。
このお寺の北側300メートルほどの台地に有名な八祖堂がある。中央に宝珠を乗せた屋根の曲線が四方に延びる姿が柔らかくて美しい。お堂には鍵がかけられていて内部を観察する事はかなわなかったが、堂内には八角形の回転式の厨子があり、それぞれに空海を含む8人の高僧を祀ってあるのだそうだ。盛夏の頃に訪ねたが、春秋には両側から石段を覆う楓が美しいそうである。
参考文献:山本修巳著:「佐渡古寺巡礼」