小春奈日和

赤ちゃんは、人間は、どのように言葉を獲得するの?
わが家の3女春奈と言葉の成長日記です。

602 八千矛の神 その7

2017年07月15日 01時24分21秒 | 大国主の誕生
大国主の誕生602 ―八千矛の神 その7―
 
 
 神語(かむがたり)と天語歌(あまがたりうた)が同じものである、というのは、折口信夫も
「国文学の発生(第四稿)」の中で、
 「名は神語・天語歌と区別しているが、此の二つは、出自は一つで、様式も相通じたものである」
と、しています。
 
 折口信夫は、海人駈使を、海部駈使丁(駈使丁は、官内の雑務に駆使される者のこと)の
ことだとして、神祇官の配下の駈使丁として召された海部の民の上流子弟の者とします。
 天語歌についても、海部駈使丁や卜部が行った壽(ことほ)ぎの護詞や占い、お祓いなどが
次第に物語化して「天語歌(あまがたりうた)」である、とする考えを唱えています。
 
 一方の土橋寛は、海人駈使を、「伊勢の小氏族天語連に隷属する海部で、宮廷に駈使丁と
して貢進され、斎部氏(忌部氏)の配下に属して物語・歌謡の伝承・述作に任じたものと思われる」
とし、八千矛の神の物語を作ったのもこの海人駈使とする説を述べています。
 
 両者の考察は根本的な部分においては同じものと言ってよいものです。
 さらに、折口信夫も土橋寛もともに馳使(はえつかい)を杖部(はせつかべ。丈部とも)と呼ばれる
部民とする解釈を示しているのですが、これについては井上辰夫(『古代王権と語部』)もまた、
ハセツカイを後の杖部のこととし、出雲には、神門郡滑狭郷、出雲郡の建部郷、出雲郷、漆沼郷に
丈部がおり、とくに漆沼郷には丈部臣忍麻呂、丈部臣金麻呂と、臣姓をもった、杖部(丈部)を統括
した者と思われる名前がみえることから、八千矛の神の天語歌に出雲も関わっていたとしています。
 
 ところで、天語歌と同類のものと考えられる歌が『万葉集』に収録されているのです。
 
 『万葉集』巻16-3807に、葛城王が陸奥に遣わされた時に、国司のもてなしが不十分で王は
不機嫌になったところを、以前に采女をしていた女性が、左手に杯を持ち右手に水を持って、
 
 安積山影さえ見ゆる山の井の浅き心をわが思わなくに
 
と、詠んだので、王も機嫌を直し、酒を楽しんだ、とあります。
 天語が、伊勢国の三重の采女が酒を献上する場面で詠んだ歌であることと同じ形式になっている
わけですが、見すごしてはならないのが、これが陸奥である、という点です。
 それと言うのも、『続日本紀』の神護景雲三年の記事に、
 
 陸奥国白河郷の人外正七位上丈部子老、賀美郡の人丈部国益、標葉郡正六位上丈部賀例努等
十人に阿倍陸奥臣の姓を賜うのと、安積郡の人外従七位下丈部直継足には阿倍安積臣、信夫郡の
人外正六位上丈部大庭等には阿倍信夫臣、柴田郡の人外正六位上丈部嶋足には阿倍柴田臣、
会津郡の人外正八位下丈部庭虫等二人には阿倍会津臣、磐城郡の人外正六位上丈部山際には
於保磐城臣の姓を賜う。
 
と、あり、陸奥国に丈部がおり、その中の安積郡にも丈部の直継足という人物がいたことが記されて
いるのです。
 
 采女と言えば、倭氏も采女に関係します。
 仁徳天皇が崩御した後、次の天皇となったのが履中天皇ですが、同母弟の墨江中津王(スミノエノ
ナカツミコ)が履中天皇暗殺を企てます。
 淤宇宿禰の件で決着に導いた倭直吾子籠(やまとのあたいあごこ)は阿曇連浜子ともにこの時墨江
中津王側についたのです。
 そのため履中天皇は吾子籠を殺そうとしたのですが、吾子籠は自分の妹の日之媛(ヒノヒメ)を天皇に
献上することで許してもらいます。
 『日本書紀』は、
 
 「倭直等、采女貢る(たてまつる)こと、この時に始まるか」
 
と、記します。
 倭氏は采女を差し出す役を担っていたのです。
 
 倭直吾子籠と言えば、淤宇宿禰が朝鮮半島に渡っていた吾子籠を呼び戻す時に、仁徳天皇から
淡路の海人八十人を副えています。
 そして、吾子籠とともに墨江中津王についた阿曇連浜子もまた淡路の海人と関係します。
 墨江中津王の謀反の時に、浜子が、
 「淡路の野嶋の海人である。吾は安曇連浜子」
と、名乗っているのです。
 
 もっとも、重要なのは淡路だけでなく阿波を含んだ地域になるのですが、天語に関して、もうひとつ
注目すべき氏族が存在します。
 天語氏です。
 天語氏が天語に関係するというのは多くの研究者が指摘するところです。
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