ひとりごと

ミーハーなさばきちが、観た映画の感想をテキトーにつぶやいてます。
基本的にレビューはネタバレですのであしからず。

ココシリ

2006年07月02日 | 映画「か」行
チベット最後の秘境、ココシリ。
その毛皮が高級毛織物の原料となるチベットカモシカは、密猟者により乱獲されわずかの間に100万頭から1万頭にまで激減してしまっていた。
先祖から受け継いだ壮大な自然を守るため、密猟者と命掛けの闘いを続ける山岳パトロール隊の、実話に基づいた物語。


文字通りの命掛けだった。
密猟者との闘いはもちろん、厳しい自然環境との闘いでもある。美しく壮大なココシリの自然が、何度も何度も彼らの行く手を遮ろうとする。
流砂、吹雪、そして標高4700メートルの世界では、少し走っただけでも息が切れ重い高山病を招く。
彼らが敬い崇める神聖な場所ココシリは、とても恐ろしい場所でもあった。いつ密猟者に撃たれるかわからない。流砂や吹雪に襲われるかわからない。
過酷なパトロール。命を落とす者もいる。期間が長くなればなるほど、その可能性は高くなる。それでも彼らは、山を離れ、またしばらくするとここに戻って来たくなると言う。

パトロール隊は国や県から援助を受けているわけでもなく、地元の有志によるものだ。隊員は1年以上も無給で働き、その上常に命の危険にさらされている。
しかし、だ。彼らの行動はもちろん称賛されるべきものではあるけれど、続けるためには綺麗ごとばかり言っていられないのが現状だ。
資金調達のため、押収した毛皮を売りさばくことだってある。目的を果たすために、時には命を犠牲にしなければならないことだってある。

そして、密猟者にも同じことが言える。カモシカを撃つのと同じように人を殺せるその神経には寒気がするが、かと言って彼らの全てが悪人なわけではないのだ。かつては放牧で生計を立てていた老人。しかし草原が砂漠になり、それが続けられなくなった。食べていくために、生きるために密猟に関わっているという、誰にも責めることができない現実。

パトロール隊の男達。彼らは過酷な任務をこなしてはいるけれど、一方で家庭を持ち家族を愛する普通の男性でもあるのだ。
真剣でまっすぐなあまり粗野なところもあるけれど、ココシリを守るという使命に燃え、自分達の仕事を心から誇りに思っている。土や泥で汚れた武骨な顔は、ココシリの自然と同じくらい、とても美しかった。

カリスマとも言える存在感を放っていた隊長のリータイ。そして、パトロール隊に同行するうち、次第に表情が男らしくなっていった新聞記者のガイ。
ココシリの現状がマスコミに取り上げられ、国がチベットカモシカの保護に乗り出した。ココシリの状況は変わった。公の機関が関わるようになり、たくさんのボランティアの働きによって、チベットカモシカはその後5万まで増えたという。
山岳パトロールで命を落としてしまった人達も、これで少しは報われるんじゃないかな・・・。圧倒的な自然を映し出した映像から、何か痛烈なメッセージを受けたような気がした。


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2 コメント

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俳優 (マダムクニコ)
2006-07-13 21:20:09
>まさに命がけ、演技にも気迫が溢れていて、素晴らしかったです。



本作は、命がけで撮ったという点で、ドキュメンタリーそのものですね。

無駄がなく、完璧!

社会的にも意義のある作品だと思います。



コメント有難うございました。
マダムクニコさん (さばきち)
2006-07-16 20:23:36
コメントありがとうございます。

実話を基にしているということと、実際にココシリで撮影しているという点で、映画というよりもドキュメンタリーに近いようなリアル感、迫力がありましたね。俳優、監督、スタッフともども、まさに命がけという感じが伝わってきました。

結構重たい内容だったんですが、今現在チベットカモシカの数が増え続けているということが唯一の救いです。