どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設10年目を疾走中。

ポエム134 『ポピーと女性事務員』

2016-10-01 00:30:43 | ポエム

 

     ポピー

    (季節の花300)より

 

 

 

  駅に通じる商店街の歩道を行くと

  ガラスの扉を開けて女性が出てくる

  彼女の手には白いタオルが握られ

  おもむろにショーウインドウを拭き始める

 

  ぼくが出勤する時刻とかさなるのか

  おなじ光景にときどきぶつかる

  彼女は街の不動産会社の事務員で

  ちょっぴり背の高いベテラン社員なのだ

 

  彼女の視線の先には店内の物件情報が並ぶ

  よく見えるようにガラスを拭くのはそのせいだ

  舞い上がる埃や排気ガスなどの汚れを拭い

  間取り図や賃貸料金を見やすくしたいのだ

 

  ポピーを配したスカートの女性事務員の後ろ姿に

  駅へ急ぐ通行人の視線が留まる

  紺色の事務服とカラフルな花柄の取り合わせが

  似合っているようないないような・・・・

 

  あるいは腰高のバランスが気になるのか

  好奇心はいつでも男たちの欲望を刺激する

  毎日のように替えるプリント地のスカートが

  街の不動産会社のディスプレイになっている

 

  ショーウインドウのガラスを拭きながら

  女性事務員はじっと物件情報に見入ることがある

  恋人ができたら3DKのマンションに住み

  玄関に季節の花を飾りたいなどと思うのだろうか

 

  夏を境に女性事務員の姿を見かけなくなると

  結婚したのかそれとも病気になったのかと

  要りもしない心配にとらわれる

  掲示物に目をやり彼女の境遇を推し量ったりも・・・・

 

  それにしても彼女の身に何があったのだろう

  一面に咲いたプリント地の花に惑わされていたが

  ポピーの時期はとうに過ぎていたのだ

  季節はずれの花を網膜に残してどこへ消えたのか

 

  晩秋になっても姿の見えない不動産会社事務員は

  街行く人びとの記憶から日々抜け落ちていく

  拭く人のいなくなったガラス窓にうっすらと埃が付き

  歩道にはプラタナスの黄葉が折り重なる

 

  季節と人の思いと雲のゆくえはどこかでリンクする

  人間と花と街並みは遥かに親密だ

  女性事務員と花柄のスカートと不動産会社の間には

  深海に沈んでいく探査艇の窓のような寂寥がある

  

  

  

  

 

 

 

 

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