どうぶつ番外物語

手垢のつかないコトバと切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設19年目を疾走中。

ポエム163 『水茄子を恋う 』

2017-06-30 01:25:10 | ポエム

 

     水茄子

    (泉州水なすPR画像)より

 

 

 

  ひゃー、こうべ病むなあ

  田舎のばあちゃんがしわくちゃの顔を綻ばす

 

  たんぼの畦で早めの昼飯が始まったのだ

  手には持ってきた曲げわっぱの弁当箱

 

  今しも汲んできた清水がヤカンから注がれる

  弁当箱の中はたっぷりの水とコメの飯

 

  飯の上には手で割いた水茄子の浅漬けが泳ぐ

  ばあちゃんは水茶漬けが大好きなのだ

 

  ヒャー、おめえもこうべ病むべえ?

  働き盛りの嫁ごにも感想を求める

 

  んだなあ、たしかにうめえなあ

  暑い時期は水茄子の茶漬けにかぎるわ

 

  だけどよお、年寄りはいいけど

  おらたちはもうちょっと力のつく食い物がないとな

 

  息子がオヤジと顔を見合わせながらいう

  茣蓙の上の重箱から何が出てくるか期待しているのだ

 

  そうだろな、いくら水呑み百姓でも茶漬けだけではな

  ふふふふと笑って二段重ねの重箱の蓋を取る

 

  重箱の中には色とりどりの具が詰められている

  早起きして嫁と共に作った煮物やゆで卵も整列だ

 

  下の段には海苔を巻いた握り飯が十個ほど

  古漬けのたくわんやら牛蒡漬けも少々

 

  いやあ、こうべ病んだなあ

  白髪の頭に指を当てて水茄子の旨みを脳に押し込む

 

  水茶漬けで勢いついたから握り飯でも食うべえか

  草取りがあるのでばあちゃんもシャケ握りを手に取る

 

  よく食うなあ、茶漬けは味噌汁替わりか

  輪切りのゆで卵を頬張りながら息子がからかう

 

  和やかな昼飯風景に蛙もゲゲゲと笑う

  嫁は日焼け予防の手ぬぐいを被りなおす

 

  あの時の一コマが幻のように甦る

  都会にあって記憶の中の水茄子をいつまでも恋うている

 

  

 

 

 

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