サッカー日誌 / 2009年04月24日


中条一雄著『デットマール・クラマー』の評価


ミズノ スポーツライター賞表彰式
(4月21日・グランドプリンスホテル新高輪)

★選考事情の内幕は?
 ミズノスポーツ振興会による「ミズノ スポーツライター賞」の表彰式とパーティーに顔を出した。この賞は毎年、スポーツの本や記事の中から数点を選定している。今回が第19 回である。ぼく自身、第4回に「ビバ!サッカー」の連載で受賞したことがある。
 今回の表彰式に行ったのは中条一雄さんの『デットマール・クラマー 日本サッカー改革論』(ベースボール・マガジン社刊)が優秀作品に選ばれたからである。「ビバ!サッカー」のホームページに連載したものだし、本にするときに編集や出版依頼をお手伝いしたので関係者にお礼を言いたかったからだが、選考の内幕も聞いてみたかったこともある。
 今回は中条さんの本のほか、中鉢信一『ケニア! 〜彼らはなぜ速いのか〜』(文芸春秋)、布施鋼治『吉田沙保里 〜119連勝の方程式』(新潮社)の3つが表彰された。「ケニア」が最優秀賞、「クラマー」と「吉田沙保里」が優秀賞だった。

★後世に残る本として第1級
 3つの本は、それぞれ性質が違うが、後世に残る本としては中条さんの「クラマー」が断然である。日本のサッカーを根本から変革したクラマーさんについては、いろいろな伝説が入り乱れて、その中には、かなりいい加減なものもある。中条さんは、クラマーが初めて日本のサッカーに接したとき以来、同じ時代を密着して取材し続けてきた。しかし、過去の体験や資料だけに頼らないで、繰り返し本人にインタビューしている。日本のサッカーとクラマーさんに関する資料として第1級である。
 取材先に密着しすぎると、思い入れが強くなって内容が偏ることがある。しかし中条さんは事実をしつこく追及することによって、その弊害を免れている。しかも、情報の出所とその評価も考えて、クラマーさんと自分との密着した関係をはっきりと書きこんでいる。これは20年後、30年後にクラマーを調べる人にとって非常に貴重である。

★ミズノ賞にぴったりの『ケニア』
 女子レスリングの金メダリストを徹底取材した「吉田沙保里」も後世に残る資料だろう。レスリングはサッカーほどには多くの人に取り上げられていないから希少価値がある。
 『ケニア』は、この国から陸上長距離の世界的選手が続出している理由を、スポーツ科学の研究者から取材し、現地に行って追求している。ヒトの筋肉の繊維には長距離向きと短距離向きがある。ぼくは1986年に読売新聞で「スポーツ科学」の連載をしたとき、この問題を取り上げたことがあるので興味深く読んだ。
 ただし専門家の間では、かなり前から知られているテーマだし、新発見があるわけではないから「後世に残る」という性質の本ではない。読み物として非常によく書かれているのが選考委員に評価されたのだろう。
 「若いライターを育てる」というミズノ賞の趣旨にぴったりだったのだと思う。


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