欅並木をのぼった左手にあるお店

ちいさいけど心ほっこり、French!テイストなお店♪

プールサイドでぼんやり灯るキャンドル

2012-06-29 | une nouvelle
ホテルの明かりをサングラスごしに眺めている。来るかもわからないあの人を待ちわびて。
最後に交わした言葉。味気ないさよならという響き。
あの人は振り返りもせず、プールサイドの階段をかけあがっていった。
冷たいまなざし。ホテルの明かりを見つめていた、あの人の横顔。

心地いいギターの音も、すこしけむった水の匂いも。
今のわたしには無機質なものにしか感じなくて。ただ、風に揺らぐテーブルのキャンドルだけがやけに目にはいる。
胸をたぎらすようなささやきは・・。冷めたくちびるの感触。
すべてのものが心の中からこぼれていきそうで・・、体の力がぬけない。

マダム、氷が消えてなくなりそうです。
そばにいた背の高いウェイターにも気づかず、暗がりにとらわれていた。
いいのよ、もう部屋に戻るから。
今夜は雨がきますよ。風邪をひかれないように・・。
ありがとう。
立ち去ろうとするウェイターに声かけて、

明日ここを出る時には雨があがっているかしら?
ウェイターは立ち止まって、プールの方を見つめて。
それはわかりませんが、気分によるものなのかもしれませんよ。
ふふ、そんなこと?
ウェイターははにかみながら、
キャンドルを愛しそうに眺めていらっしゃいました。雨がきても消えないように守ってあげれば・・。
雨はあがる?
えぇ。そして、ここは雨上がりがとても素敵な場所なのですよ。

バラをあしらったふたりの想い

2012-06-29 | une nouvelle
真夜中に響く鐘の音。不思議なひとときが幕をあけて、昼間には見ることのないドラマがそこに展開されていくのです。
一羽のハトがお城の窓にたどり着くと、窓がゆっくりとひらいて・・。
若い男の手が輝くものをそこに置きます。
ハトはくちばしでそれをたずさえ、また夜の街へと飛び立っていきます。
悲しげなまなざしの男。ハトの消えた街を見おろして、またゆっくりと窓をとじるのです。

人の途絶えた通りのベンチ。女性はなにかを待ちわびています。
すると、建物のむこうからハトがあらわれ、女性のそばにおりてきます。
くちばしからさがったものをそこに置いて、ハトはふたたび飛び立ち、並木の中へ。
"ありがとう"
女性はちいさくつぶやいて、夜に輝くものを手にするのです。

ちいさな銀のロケット。女性はそれを胸のあたりで握り、ハトがやってきた夜空を見上げるのです。
通りを歩いていく女性。ロケットを見つめて、中をひらいてみると・・。
ありし日のしあわせそうなふたりの笑顔。
にじむまなこでそれを見つめるのです。

家路について、月あかりのそばのソファーにうずくまると。
涙があふれてきます。勢いのまま泣いて、やがて、静寂がおとずれると、ソファーからロケットが落ちます。
バラをあしらった輝くロケット。それを拾うと、あたたかな言葉が女性の胸に響いてきたのです。
それはむかし彼がよく言っていた口ぐせ。
まるでロケットにこめられたものが彼女へ伝わってくるように・・。

"バラの色はたくさんあるけど、君に似合うのはピンク。
品があってあたたかくて、恋の誓いを結ぶ花。
ほら、泣いてる顔は君に似合わない。この中の思い出のようにほほ笑んでみてよ。
たとえ今は離ればなれでも、けっして切れない思いの糸はお互いの胸に刻んであるから・・。"

短くきざむ夜更けの鐘。
彼女はゆっくりと立ち上がりベッドの中へと。
バラをあしらったちいさな輝きを握りしめたまま・・。
深く眠って彼との会話が楽しもう。いつの日か彼と楽しく過ごせる日まで・・。
そんな願いさえ不思議と叶えられそうな、美しい月あかりの下で。

ほんとうの魔法の言葉

2012-06-26 | une nouvelle
昔、この街へ渡ってくるとき、わたしは船に乗ってやってきた。
歌のあいま、静かな聴衆を前に彼女はマイクに手をそえて、
唄をたよりに、このステージへたどり着いたのだけれど、とても不思議な話があるの。
彼女の目がうっとりと輝き、
本当に星々のきれいな夜だった。わたしは眠れずに船上のデッキで夜風を浴びてたの。
最初はひとりと思っていたんだけど、むこうに人影があって。初老の紳士がわたしのそばへ寄ってきた。
とてもおしゃれな方。
今夜の空はすばらしい。まるで星々がなにかを祝福しているかのようですね。
わたしはほほ笑んでみたの。
恋人もこの星の輝きに置きざりですか?
笑った顔の素敵な人。
わたしは言ったの。
恋人もいないし、夜空を見上げにきたんじゃないの。ただベッドにいても眠りにつけないだけ・・。
わたしは星の輝きがおちてきた海の遠くを眺めていたわ。
すると、その人が不思議なことを言ったの。
胸の中になにかの知らせがあったのでは? この夜空になにかを受け取りにきたのでしょう。
その時、わたしには意味がよくわからなかった。
あれを見て下さい。
紳士が指さした先には、まぶしいくらいに輝く星があったの。
あの星はふだんあまり輝くことのない星。だけど、今夜は主役のようにとても明るい。良い知らせですよ。
わたしはしばらくその輝く星を見上げていたわ。うっとりとなにかに包まれているような感じ、安らぎを感じていたの。
いずれその安らぎか力を与えてくれますよ。
どういうこと?
紳士はわたしの口を指先でふさいで、
もうなにも考えないで。ただ、あの星を見あげて、星の語りに耳を澄ませていて・・。
わたしは言うとおりにしたわ。とても不思議な時間だった。
しばらくなにも聞こえなかった。すると、なにかが胸に入ってきたのよ。とてもあたたかいなにかが・・。
いつまでそうしていたかわからない。部屋に戻ると、すぐに深い眠りにつけたの。船がこの街につく、そうぎりぎりまで。
そして、わたしはこの街にやってきたの。なにかに導かれるような感覚で・・。
あの時、紳士がわたしに言ってくれた言葉。いまでもわたしのお守りよ。
わたしのとなりでこう言ってくれた。
"星があなたの中になにかを刻んだようですね。そのことを素直に喜んで。なぜならあなたの心にはもう星の系譜があるのです。
星がいつもあなたを見守り、夜になれば安らぎはひろがり、あなたにほほ笑んでくれるからと。
なにも考えず、船にとび乗った若いわたしに、その言葉は鋭く胸を打ったの。ほんとうの魔法の言葉のようにね。

夜、ふたりの気持ちを通わせるもの

2012-06-26 | une nouvelle
夜、道沿いに並べられたキャンドル。
人通りの少なくなった道をふたり歩きながらなにも話さず。
キャンドルよりも繊細な輝きをみせる星空を見上げることもなく。
ただ淡々と連なる明かりに寄り添うように。

曲がり道にさしかかると、そこから眼下に街が望まれ。
寝静まりつつある街並を、明かりの消えた家々を見下ろして。
すると、うしろからやってきたのはギターを持った紳士。
これから眠りを誘う曲を演奏するのだという。

弦をはじくその静かな音色にふたりの心はゆるやかになっていき。
紳士の笑みとともに星々が流れるようなきらめきを放つ。
あたりに響く不思議な音はこの眠りにつく街並にも広がっていき。
おだやかな声で紳士はつぶやくのです。
"躍動を終えて、安らぐひととき。街よ、おやすみ。あの山のむこうから陽がのぞくまで。"

ギターの紳士と別れ、ふたりはまたキャンドルの道沿いを歩いていき。
まだ会話はないけれど、不思議なきらめきが胸の中に。
星々の空を見上げると、先ほどのギターの音色がまだとどまっていて。
相手の見上げる顔と目線が重なり、ちょっとはずかしそうな笑顔に。
"明日また陽がのぼるまで。こうしてギターの音色に心を酔わせてよ。"という紳士のささやきを、ふたりは心の中で確かに聞いたのです。

見失いつつあるものをふたたび・・

2012-06-17 | message


まわりのいろいろなものが気になったり、狭苦しい味気ない思いばかりが頭をよぎったり・・。
そんな時はあなた自身があなたの色を忘れていることが多い。
あなたの色は濃い色であれ薄い色であれ、あなたの元気のみなもとです。
そこに立ち返って、力をみなぎらせていく必要があります。

あなたの色と思い違いとしてること、また、自分を卑下してこんな色と思い違いしている時も、見分け方は簡単です。
アクセスしてみて、はつらつとした明るい気分に戻れるか、元気な自分が取り戻せるかということです。
現実のいろいろなことやそれにともなう迷いによって、自分の居場所を見失いつつある人たち。
わたしを含めとても多いです。
思い出しましょう。元気な自分の居場所を。
そこからあなたの堅実なしあわせは続いているのですから。

指にからまる青いリボン

2012-06-13 | une nouvelle


砂浜にひろがる色あざやかなパラソル。燦々と降り注ぐ日ざしの下、人々が思い思いに過ごしている午後。
とあるパラソルの下で少年は待ちぼうけ。
まわりの貴婦人たちの話し声。冷たい飲み物を口にしているのを尻目に、少年はひとり眉間にしわを寄せている。
大柄な中年男ときれいな女性が海からあがってきて。
少年、ありがとよ。もう泳ぐのにも飽きたな。
何枚かの銀貨を少年に渡して、
もういいぞ。
ねぇ、わたしあっさりしたものが飲みたいわ。
よし、買ってきてやろう。
レモンソーダがあればそれがいいわ。
わかったよ。ん、まだいたのか? もう行っていいぞ。
ぺこりと頭をさげて、少年は走っていき、
わたしも一緒に行きたいけど、泳ぎ疲れたの。
いいんだよ。オレはまだ体力は残っているから。それに、
男は女に顔を近づけて、
後でお前を喜ばす体力もな。
いやな人。
ふたりは口づけを交わし、男はパラソルを離れていく。

ビーチ客相手のお店の脇。壁に寄りかかり座ったままで。
少年はポケットのコインの指で動かしながら、あたりを眺めている。
すると、水着姿にカーディガンをはおった細身の女性がやってきて。
あなた、もしよかったらちょっと手伝ってくれない。
少年はなにかわからないながらも、女性についていき・・。
片づけをはじめている女性たちのパラソルへ。
このパラソルがたためないのよ。中がさびて動きづらくなっているのかしら?
少年は体ごと中に入って、ごそごそと。やがて、パラソルがしおれていって・・。
ありがとう。やっぱり男の子ね。
女性は少年の肩に手をおいて、
お礼はなにかがいいかしら?
なにも言わず少年がもじもじしていると、
そうだ、おなかはすいていない? とっておきのランチがまだ残っていたのよ。それでいいかしら?
小さなバスケット受け取る少年の手には小さな切り傷が・・。
あら、血がにじんでいる。今傷つけたの?
かくそうとする少年の手をにぎって。
待ってて。良いテープがあったはず・・。
黙っている少年に顔を近づけて、丁寧にテープでおおい、
あと、これはおまじない。
あざやかなブルーのリボンをその指に。そして、
はやく良くなるように、ね。
女性の笑顔に少年はうつむいて、やがて、走り出します。
小さなバスケットも置いたままで。

昼さがりにはあれだけいたビーチの人々。夕がせまり暗さがひろがってくると、パラソルも人もまばらに。
少年は店屋の脇で座ったままぼんやりしています。
店主が店じまいをしながら、
坊主、今日はどれだけおこずかいを稼いだね。
少年はそんな言葉など耳にしていなくて。何度も指のリボンを見つめ返しているのです。
明日は祝日でたくさんの人たちがやって来るぞ。良いかき入れ時だな。
少年はリボンを見ながら、あの女性の笑顔を思い出していました。
いつの日か恋をする自分に思いをはせながら・・。
胸にこみあげてくる、まだはっきりとはわからない勢いみたいなもの。
あざやかな青いリボンを見つめる、少年の口もとには男らしいやさしい笑みが見えかくれしているのです。

人らしい美しい輝き

2012-06-12 | essay
Melody Gardot ~ Impossible love



心の深い深いところに。
普段はみられない美しい輝きが潜んでいるという。
人は刹那、一筋のきらめきをあたりに響かせる。
心から心に。真摯な響きは受ける心の奥底に眠るものと共鳴して・・。
そんな美しい物語を聴かせてあげましょう。
心に眠るすばらしい輝きは今もあなたの中にあるということを。
ふたたび放たれるのを今か今かと待っているということを、ここに伝えておきたいのです。

橋のたもとに置いてきた過去

2012-06-08 | une nouvelle
ちょっと馬車を止めて下さらない。
その声に橋の真ん中で蹄の音はとまり、
扉をひらいて下りてきたのは、黒いドレスの夫人。
外灯がともる橋のたもとにいってなにかを置いてきたのです。
もうよろしいのですか?
訪ねる馭者に目をやって、
いいのよ。わたしの思いは通じるはずだから・・。
黒い裾が扉の中へ消えると、ふたたび蹄の音がなりはじめ・・。
かなたへと消えていくのです。
そこへ夜更けを告げる聖堂の鐘。
橋のたもとには輝くものが残り・・。
はるか夜空の星と同じような輝きがいつまでも。まるでこの世界にいない愛する人へのメッセージのように。
過去のしあわせな思い出が夜の闇にゆらめいているのです。

輝きの共鳴のなかに聞こえてくるもの。
それはありし日の愛のささやき。
ふたりの笑い声が重なりあい、やがて、沈黙に。
ねぇ、わたしを連れて行ってくれる?
この遠征のあとに誓いをたてよう。
今はダメ?
かならず君のもとへ帰ってくるから。愛が僕たちを祝福してくれている。
そう言って髪に挿してくれたパールのヘアピン。

長い雨の後で訪れた訃報。
そして、時間とともに変化していく気持ちの揺らぎのなかで。
今は愛する人のもとでしあわせな時を過ごしているけど、あの頃の輝きがたまになにかを語りかけてくる。
馬車に揺られながらぼんやりと窓に額を寄せて。
ふと、見上げると無数の星・・。
あなたへの思いは橋のたもとに・・。
忘れたりはしないけど、心の奥底にしまってしまうから。
あなた、新たな生命を授かることになったのよ。
今はとてもしあわせ。あの頃の笑顔とはまた違ったわたしだけど、これからは愛するもののために生きていくわ。

弾かせてもらう時は真摯な気持ちで

2012-06-07 | une nouvelle
しっかり荷物を運んでいるアリの列を横目に、大きな石に腰かけキリギリスは演奏を続けながら言います。
"今日もがんばっているね。さぞかしごはんがおいしかろう"
何匹かのアリがキリギリスの演奏に耳を傾けながらも、働く足を止めません。
木の上にいる年老いたフクロウがキリギリスに声をかけます。
"お前さん、この夏を越えたら、秋がやってきて、やがて雪の降りつもる冬になる。
あのアリたちの姿を見て、額に汗しようとは思わんかね?"
キリギリスは演奏の手をとめて、はにかんだ笑みをつくって、
"あのおてんとうさんはそうは言ってないよ。アリたちにはアリたちの、わたしにはわたしのふさわしい一日があるとね。
こうして楽しんで弾いているのも、わたしにとって大切な一日さ。
アリたちにもわたしにも素敵な贈り物をあの輝きは与えてくれてるよ。
だから、弾かせてもらう時は真摯な気持ちでさ。だれかがこの演奏を聞いて、なにかを育んでいけるようにね。"

人生の楽しい旋律

2012-06-07 | message



気になる店先を通って、ちらっと中をのぞきながら、そのまま行き過ぎていた毎日。
だれでも気になってる店屋がひとつやふたつはあるはず。
とある星の輝く時、そこへ入ってみることができるなら・・。
今までにない夢の扉はひらかれるもの。それは、自分でも計りしれない明るい未来のはじまり。
まだ見ぬ夢の世界がひかられる瞬間(とき)。
とまどいも驚きも含めて、人生の楽しい旋律。ひさしぶりに味わってみませんか?