あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 146 家族らしい家族 そういえば、この屋敷で家族らしい家族は早瀬夫婦くらいなものだ。 それでいて、やっかみを持つこともなかった。 この夫婦を見ていると、みんな心が知らず知らずに安らぐ。 そんなことを見ているうちに、彼らを自分の家族のようにも、思ってしまっているのだ。 微笑ましい夫婦だと思っているのである。 「がんばるのよ」 早瀬の妻も汗でいっぱいになっている。 若いメイドは早瀬の妻を見て、同郷であるから、郷土料理の“お焼き”をつくったのをごちそうしてもらったことを思い出した。 この夫婦はガーデン・パーティも好きで、従業員の内輪で、もちろん承諾をもらってから、楽しんでいたのも思い出した。若いメイドは屋敷内に走った。 梯子は後二段になった。夫の体を両手でささえながら、妻はすたすたと階段を下りていう。 「力を緩めるのよ。もうそこに、地べたがあるんだ」 妻は二段めに足をかけている夫をそのまま、地面まで降ろそうと考えたのだ。 「だいじょぶです!」 「だいじょうぶよ」 と、みんなは声をかけるが、汗が顔中に点々とつけた早瀬は必死に梯子を握りしめている。 苦しみと不安から、彼は自らを守ろうとしているのが、わかった。 しかし、このままでは、埒があかない。 「じゃ、みんなで、手を離してあげて」 中西ドクターはにこやかに言った。 「はい、はい、だいじょうぶ、だいじょうぶ」 ドクターは繰り返す。 「すごい力だね」 茜は苦しみにある人がこんなに力があるのかと驚いた。しかし、後からドクターから、君だって、お腹が痛かったら、力を入れるじゃろ!
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