ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 047科学にも良心が必要 「本当は、もっと……。 想像してもらったらわかるのですけど……。 これは、マネキンで決して人間ではないのです。 でも、よく作ってくれました」 「手から下がるものは、何ですか?」 「それは、皮膚よ」 と輝代。 「皮膚……?」 ナンシーは不思議そうに見ていた。 博士というニックネームをつけられた少年がいう。 「水膨れって、知っているかい」 「やけどをしたときできるものだよね」 初老の男性は何も言わず、博士の顔を見てうなずいた。 博士は彼も知っているのだと思った。 それは、当然のことだろうと思った。 「で……」ナンシーは博士の顔を見た。 博士は初老の男性の顔を見た。 「説明してあげてよ」 初老の男性は博士を見て微笑んだ。 「いいですか。では、まず、火傷をすれば水痘というものができる。 その経験は誰にでもあることと想う。 広島の原爆の場合、瞬時に熱線を浴びせられた。 つまり、水痘ができるわけです。 でも、それだけじゃないのです。 放射能の作用に電離というものがあります。 電離作用によって水痘はできるのです。それは瞬時にできます」 「博士がいうと、ぜんぜん、被害者の苦しみを感じないわね!」 ミス・ホームズは批判した。 「僕は科学的な考えを話しているまでです。 感情がないというわけではない。 科学を軽視しちゃいけないと僕は想う」 「でも、科学にも良心が必要よ」 「良心というものは、実は科学よりも困難な問題で……」 博士は困惑していた。 「困難……、簡単なことよ!」 ナンシーの声が館内に響いた。 「そう、簡単なことだよね……。それを大人は忘れる!」 初老の男性は力なく話した。 「博士は大人じゃないわ。大人だけでなく、ガリ勉くんもそんなことを忘れるものよ」 と、ミス・ホームズ。 「でも、科学的考えも大切なことだよ。水痘がふくれあがって、つぶれて、皮がたれさがっているというわけだね」 博士は説明を簡略化した。 「大きな水ぶくれができて、割れたってこと?」 勇気は勉にたずねた。 「そうだよ」 と、勉。
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