ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 054ヒロシマ……それはおとぎ話ではない 「それにしても、人間は戦争好きだな」 「でも、戦いが起こるのも仕方がないよ。 平家は栄華をきわめて、贅沢のしほうだいだったのだからね……」 「それを“奢れる平氏は久しからず”っていうのよね」 李が博学なのに勇気はおどろいた。 「でも、戦争はいやだわ」 「そうよ。だけど、戦争になるのには、それなりの理由だってあるはずね……」 ミス・ホームズは推理を働かせる。 「でも戦争がその問題を解決する手段としてベストなんて、間違っていると思う」 カメラマンは懸命に少年たちの表情を追っている。 「それは、そうだけど……。喧嘩両成敗って言葉もあるよ」 マイクが珍しく発言した。 マイクは平和公園に行って、言葉がでないほど、一番にショックを受けていたのだ。 正義だといって、片づけてしまっていたマイクは、他の者より知識もなかったのである。 ヒロシマは単純な正義と悪の物語では決してないのだ。 「戦争って、喧嘩だっけ?」 ナンシーは考えこんだ。 「戦争って、国と国の喧嘩だと想うわ……。 喧嘩って言うのに道理や常識がないように、戦争というものにも、そんなものはない」 「でも、喧嘩って、成長していく過程で必要なことなのよ」 ミス・ホームズは人間学というべきことも熟知している。 「それには、ルールがある。そのルールを守ることが必要なことだよね。 それに、殴られてみないと自分の痛みもわからない馬鹿がいるわよ」 ミス・ホームズは、マイクの顔をじっと見る。 「殴られてみないと、殴られた人の気持ちがわからない……、そうかもしれないわね」 「そんな当たり前のことがわからないのが、案外私たちなのかもしれないわ」 ナンシーは共感している。 「たとえ、第二次大戦、アメリカが正義だとしても。大量虐殺兵器が正義だなんてことは、言えないだろう。もし、その国が人道主義なんて偉そうに主張するならば……」 平家蟹のような顔をして、マイクは海を見た。 しかし、このビデオを見たエリックは、 明らかに子どもたちも勉も現状把握ができていないと知る。 ヒロシマ……それはおとぎ話ではない。 残念なことだが、イベントDのα作戦は遂行されるだろう……と、 エリックは胸の前で手を組んだ。 「そうですね」 夏八木はバスの中でモニター画面を見つめていた。
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