ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 113毒の雲 陽気に歌い、踊り、すだれをいろいろな形にして見せている。 途中で「ブリッジ」などと英語でも説明している。東京も国際観光都市の一面をもっているのである。 「だれか、南京玉すだれをしたいという人はおられませんか」 手をあげたのは、やはりマイクだった。 「♪さて、さて、さては南京玉すだれ」 マイクは横にいる男性の真似をしているが、どうもうまくいかないが、楽しそうである。 みんな、その様子を見て笑っている。こういうお座敷でも、アメリカ人の評判はとてもいい。陽気な性格で、社交的であるからである。 それから、食事がはじまる。ホリゴタツは使用されていないが、西洋の人には正座しなくっていいから便利である。 「こんな、ごちそうは滅多に食べられるものじゃないよ」 と、勉はとてもうれしそうである。 「僕なんか、毎日、こんな感じだなあー」 「よく言えるなあー」 「冗談だよ、冗談」 「シー・フードがおいしいなあー」 「見て、見て、ディズニー・ランドが見える」 「わあー、きれいだなあー。夢を見ているようだよ」 お台場も照明がなされていて美しい。 「これが日本か、でも本当は、これは一部でしかない」 「世界もまた、そうだね。豊かな暮らしをしている人たちは、一部の人たちだけだよー。そんな裕福な僕らが地球のこと、世界の人々のことを考えないといけないと僕は思うよ」 博士は落ち着いた口調で話した。 翌日、バスの中で、博士が勇気に尋ねてきた。 「ヒートアイランドのこと、もっと話さないかい」 「もっとって、何を話すの、あれ以上に何か話すことあるの」 「あるさ、環八雲のことだけど、調べたかい」 「ヒートアイランドがつくる「毒の雲」っていわれているよ。何も日本だけに限られた話じゃないけどね」 「毒の雲かあー、体に悪いってことでしょう」 「毒だからね。まず、環八上空付近は東京湾と相模湾から陸へ向かう海風が合流し、周囲の気流を吸引する風を形成する。交通量の多い環八通りを通る車からの排熱と水蒸気により、ヒートアイランドブルーム、つまり上昇気流が発生する。その結果、排気ガス中の硫黄酸化物、窒素酸化物や浮遊粉塵粒子および水蒸気などが上昇し、これらが凝結核となって人工雲、すなわち環八雲を形成するというものだ。だから、毒の雲さ」 博士の説明は詳しいが、勇気にはちんぷんかんぷんだった。 「要するに、自動車からの排ガスと熱エネルギーによって作られた雲だから、体に悪いだろうなあー」 「発見者の塚本氏は、数年前にヘリをチャーターし、毒雲の実態調査をしたそうだよ。環八雲の内部に入ると、目と喉が痛くなり、自動車の排気ガスの臭いが充満していたという。パイロット仲間の間では「毒の雲」として恐れられ、接近がはばかれていたというよ」
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