あかねさんシリーズ002 男が女de女が男 088 男くさい? 真っ赤なフェラーリーが屋敷の地下駐在車にすべりこんでいった。 茜はまったく趣味の悪いと思う自動車からおりた。 女にはやはり黒のベンツが格調たかく、世界一の安全性さえもそなえている名車に乗るべきだと茜は思う。 ずいぶん、かわり者と思う人もいるかもしれないが、この茜はこの世界の茜ではないのだ。 男尊女卑ではなく、女尊男卑の世界からやってきたのだ。 この世界の茜はなれぬ女尊男卑の社会にいて、この世界にはいないのだった。 派手な部屋にも違和感をもつ。 この男くさいにおいが、たまらない。 化粧のにおいか、香水のにおいかも、そんなものをつけたことのない茜にはわからなった。 ただ、男くさいにおいが鼻をついて仕方がないのだ。 男くさいといっても、それはわれわれの世界の茜、むこうの世界へ行ってしまった茜のことである。 「あっ……」 オカネスキーに電話をした。 「はい、わかりました。オカネお嬢様!」 すぐにオカネスキーは茜の部屋にやってきた。 「どうも、わたしは、この男くさいにおいがたまらない」 男くさいとは、こちらの世界では女くさいということなのかもしれない。 「これが、自分の部屋などとは、まったく信じられないよ」 オカネスキーはソファにすわって言う。 「おお、化粧品類のことですね」 「そう……、そうかもしれないね」 茜は窓をあけたままにしている。 「こちらの世界の茜お嬢様は、お洒落をするのが大好きなのでござるよ」 「このわたしがか?」 「あなたではなく、この世界のオカネお嬢さまでござるよ」 「こちらの世界でも、ときどき、オカネスキーは、わたしのことをときどき、オカネお嬢様っていうんだね」 と、茜は笑った。 まったく見知らぬ世界に来たわけではないので、茜はそれがうれしかった。
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