ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 122にきびに放射能治療 勇気「原爆を作る前から放射能が危険だったということはわかっていたんだね。原爆自体も危険であることも予測されるよね」 ソフィー「まったく、放射能って生まれたときから非人道的だったのね」 「でも、まだX、謎だったのよ」 「でも、始めだけだよ」 とマイクは笑顔で余裕しゃくしゃくという感じであった。 コメディアンの祭田ドンドコは、 「ところが人間というのは、思い上がるのだよ、マイク」 そういうと、ドンドコは大きな口をあけた。 目はギョロリとマイクをにらみつけていた。 マイクは「それは浅はかなことだね」と他人事のように話した。 「VTR、ドンドコ!」と、祭田ドンドコは太鼓を叩く真似をした。 画面には外国人の写真。 祭田ドンドコは地響きのような声をあげてうめくように話している。 「放射線の有害さが広く示されるようになっても、多くの放射線医たちはその害が自分に及ぶことはないと考えました。」 祭田ドンドコは薄気味わるい笑顔。 「フィラデルフィアのチャールズ・レオナード博士は経験を積んだ技師は一見もっともらしい理由をつけて害を認めず、不注意になっていた。他人には危険かもしれないが、自分にはそうではないという」 イワンはあきれて、 「自分だけは……か、隣にもそういうのがいるなあー。核兵器が存在するということは、それが使用される確率がないとはいえないのに」 と、ため息をついた。 マイクは素知らぬ顔で笑っていた。 祭田ドンドコは不敵に笑いながら画面を指さして話す。 「それにもかかわらず、より強力でより信頼性の高いX線装置が登場するにつれ、医師たちはさまざまな病気にX線治療を広げていきました。X線治療に適した病気として約百の病名があげた」 祭田ドンドコの後ろの大画面に雑誌が映っている。 祭田ドンドコは、するどいギョロ目でカメラをにらみつけている。 どこか、映画スターのジム・キャリーが不気味な主人公を演じているときのようだ。 「『アメリカX線ジャーナル』の編集者は書き、それを四十年間以上も続けたのです。多数の患者は、たむしや、にきびなど本来は重い病気でもないのに不必要な放射線治療を受けました。特に「女性の悩み」には放射線がよく効くと、大勢の女性が憂鬱症の治療として卵巣に放射線をかけられたのです」 客席のソフィー「にきびに放射能治療だって……、そんなのに放射線治療したっていうの?ひどいものね」 勇気「でも、科学的知識がなかったら、そう、お医者さんが、いいって教えてくれたら、ぼくは断ることができないだろうな……」 勉「そうかもしれないね……」 画面には碑が映っている。 「一九三六年、ドイツ・レントゲン協会は「放射線犠牲者」の碑をハンブルクに建てました。百六十九人の名が石碑に刻まれ、その後三十年間、最初のころ被曝していた人たちに潜伏していた障害が次々と表に出てきました。数百人の名前を追加するために、記念碑は拡大されました」 スタジオの明りは元通りになった。女性アナウンサーが話す。 「一九〇三年に夫婦でノーベル物理学賞をとり、一九一一年には単独でノーベル化学賞を受賞した人は誰?」 スイッチを押すイワン。 「では、ロシア生まれのイワンくん」 「言うけど、イワンです」 「おお、ナイスな日本語、どうしたのですか?」 とても、うれしそうな祭田ドンドコ。 「勇気に習いました。ぜったい受けると聞いたのですが……」 「おおー、ありがとう、ありがとう」 祭田ドンドコは感激している。 腕を顔にあて泣く真似をしている。 客席の勇気は 「受けなかったかあー、残念、残念」 と頭をかいて照れている。 でも、友好のために、だじゃれを言ってくれたことに、祭田ドンドコは感心している。 「マリ・キュリーです」 「正解です。マリ・キュリーの一族は五人で獲得したノーベル賞の数は五つもあります」 アニメーションが始まり、実験室に女の人がいる。
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