磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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32.蜂

2005年07月09日 | 【作成中】小説・メリー!地蔵盆



四、お地蔵さんがコンコンさん

32.蜂





「あ、カブト虫」
 雄二は、大きな木にいるのを見つけた。虫とり網で捕まえられる高さだった。雄二は、息を殺して、忍び足で歩いた。池山も息を殺して、静かにしてかがんでいた。

「あ、危ない」
池山が叫んだ。

 雄二は池山の声に驚いて、石にのせていた足がバランスを崩し滑った。額を木にぶち当てた。ブバーン。耳もとで、大きな低い音がひびいた。
「痛てて」
「逃げろ、蜂だ」

 あわてて、なだらかな階段を下りた。吉田幼稚園の池のところに来た。
 幸江たちはバトミントンをやめて、下におりてきて鹿に餌をやっていた。

「あ、びっくりした。あんな低いところに、蜂の巣があるなんて……。大丈夫か。わぁー、三個所も刺されている」
 池山は雄二の腕を見ていた。

 幸江たちが、雄二らのほうに来た。
「どうしたのですか」
 ジョンさんが心配そうにきいた。
「あっちの木に蜂の巣があったんや。香取ちゃんはカブト虫をとろうとして、上の方ばかり見ていたんや。そうしたら、雄二の肩のあたりに短い枝があって、そこに蜂の巣があったんや。ぼくが危ないと言ったら、香取ちゃんはびっくりしてこけて、顔で蜂の巣を叩き落としたんや」
 池山は青白い顔をして真剣に話した。

「すごいことするね」
 幸江は勘違いしている。そんなこと、わざとするわけないだろう。

「腕のほかは、大丈夫みたいです」
 ジョンさんは冷静だ。

「腕が、重っくて、痛い」
 雄二は、嫌な気分だった。

「蜂に三個所さされて、死んだ人がいたの知っている?」
 気楽に笑って恭子が話している。

「でも、それはアレルギーの人でしょう」
 なんて幸江も気楽に話している。

「ぼく、アレルギー体質や!」
「ああ、そうやったね……」
「アホ、そんなこと言うなよ。香取ちゃん、小さいときから体よわくって、しょっちゅう死にかけていたそうや。そういうことに敏感なんやぞ」
 池山は早足で歩きながらいっていた。

「あっ、下手なこと言ってしまった」
 幸江は舌を出した。雄二は気が遠くなった。

「だいじょうぶや。薬もってきた」
 池山は励ましてくれた。
「薬、早いな」
 幸江が驚いていた。

「小便だもん。小便のなかのアンモニアがきくんだ。キンカンにも、アンモニアが入っているんやぞ」
 キンカンとは虫刺されの薬のことだ。
 でもキンカンには小便が入っているわけではない。

「ほんまか」
「曽我のおばあさんが言っていたでえー」
「私の国の老人も同じこと言います。虫刺されにアンモニアが効くのです」
「わたしもテレビ・ドラマで見たことあるわ」
「テレビで言っていたのなら、いいかもな」
 雄二はそう思ったが、出したばかりの小便にはアンモニアはほとんど入っておらず、何の効果もないそうである。

「ところで、それ、池山の小便か」
「そうや、ほかの人の小便どうやってもらうねん」
 池山は早口で話した。

「ぼくの小便でもきくんやろ。だったら、ぼくの小便でする」
「何や、たいしたことないわ」
 と、幸江が微笑んでいた。
「ほんまや」
 池山も笑っていた。

 だけど、雄二は血の気が引いていた。きっと青白い顔をしていることだろうと思う。
「おいおい。まず毒を吸い出せよ」

「うん、どうやって」
「口でチュチュと吸い出せよ。ぼくがしたろか」
 池山の親切は嬉しかったが、
「ええで、腕でよかった。池山にキスされずにすんだ」
 と辞退した。

 雄二は地べたに坐っている。
「呑気なことばかり言って、こんなんじゃ死なないわ。心配して損した」
「口でなんか、毒吸い出せないよ」

「ぼくが吸ったろか」
 池山はあくまでも親切だ。
「ええよォー」
 雄二は、池山の優しさは嬉しかったけど、迷惑だ。

「遠慮しなくっていいぞ」
「遠慮するよ」
 雄二は、川で缶をあらって、小便を入れた。

「これから、どうすんのんや」
「恭子、ちり紙、くれ」
「うん」
 と返事し、恭子はピンク色の絵のついたチリ紙をポケットから出した。
「これ使ってもいいの」
「仕方ないわよ」

「ちり紙にひたして、刺されたところに当てたらいいよ」
 池山が教えてくれた。

「まぁ、大丈夫みたいね」
 雄二は、ちり紙を刺された個所に交互に当てた。そして、しばらく休んだ。

「顔色、よくないな」
 池山が心配していた。

「雄二、私におぶさって」
 ジョンさんはやさしい口調だった。

「子どもじゃないから、いいよ」
 雄二は断った。

「そんなこと言うなよ」
 池山は半分怒っている感じだった。

 ジョンさんの背中は大きかった。まるで、学校の保健室のベッドが歩いているようだ。ジョンさんの背中でうとうととした。
 アパートにつくと、自分で歩いた。それは、心臓の弱い母を驚かせたくなかったからだ




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