ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 071一つ一つに思い出がある…… 日本では、戦争は風化されようとしている。 被爆者たちもいつまでも生きていられるわけではない。 最近、被爆者が亡くなられた場合、 その遺品を寄付される場合が増えてきているという。 原爆で被爆した形跡がのこる品を、広島平和記念資料館に寄付する人たちは、どんな思いでそれを寄付するのだろうか。 あの悲劇を伝えるために、役立ってほしいと願い、それを寄付していくのだ。 その一つ一つの品に、その人たちの思い出が焼き付けられている。 それは余りにもむごい、背負いきれない苦しみでさえあったと思う。 戦地から帰った青年は、焼け野原の広島に立ち涙した。 親戚から、たった一人の家族である母が死亡したことを伝えられて、悲しみにうちひしがれたことだろう。 そして、彼は家のあったところを掘った。何か、母の遺品があったらと願ったのである。 そこには、瀬戸物の茶碗があった。 それは彼が戦地に行ったとき、毎日陰膳をしてくれていたという茶碗であった。 食料不足のときなのに、毎日すまないと彼は思っていた。その茶碗を抱きしめた。 そして、おそらく、生きなければ、母の分も生きなければいけないと彼は思ったことだろう。 その茶碗も苦痛にあった人のように変形をしていた。 その遺品を家族は平和記念資料館に寄付した。 資料館にある品は、そんな思い出のある品物である。 一つ一つに、思い出がこめられてもいるのである。 たった一発の原子爆弾が、こんなに多くの人を苦しめ、辱め、いじめぬいてきたのだ。 こんなことを忘れてはいけないと思う。 忘れたとき、次の原子爆弾が、どこかに落とされているかもしれない。 朝の海はさわやかである。 涼しい風、穏やかな波。 海ばかり、陸は見えない。 水平線が真っ直ぐでないのは、地球が丸いことを証明している。 食堂に勉はいた。 「昨日、届いていたのですけど、渡すのを忘れていて、すみませんね」 アシスタント・ディレクターは謝った。 「誰から、なんだろう……」 宛て先に書かれた文字は以前と同じ文字であった。
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