磯野鱧男Blog [平和・読書日記・創作・etc.]

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022出港

2006年04月09日 | Ra.
ラヂオアクティヴィティ[Ra.]
第一部ブロック・バスター

二、怪物はどちら?

022出港



「そろそろ、瀬戸大橋が見えます」
船内放送。

みんなは、デッキへと出た。

海もすっかり、青さをしめさず、鏡のように滑らかで黒い。
波は静かに打っているから気にもならない。
船のエンジン音が心地よく聞える。

「人間の祖先は海から、やってきた」
「海坊主が祖先かな?」
勇気は低い声で話した。

「何を言っている。ダーウィンの進化論だよ」
「海坊主か!ひゃははは」
アメリカ人のマイクは笑っている。さも幼稚だと言いたいのだろう。
「でも、海坊主がいたって、別にいいじゃないか!」
「えっ!うおー!へゃへゃへゃ」
目のブルーの部分が大きく移動している。変な笑い方だ。

「そんなに、笑うことないじゃないの」
フランス人のソフィーがあきれていた。

「そうよ、日本には、ラフカディオ・ハーンという作家がいるわ。日本のホラー小説家よね」
イギリス人で、愛称ミス・ホームズという少女が物知り顔で話した。
彼女は名探偵シャーロック・ホームズの大ファンなのである。

「小泉八雲のことだね。それは、ホラーじゃなくって、怪談だよ」
「そう、日本の婦人と結婚して、その人の苗字をもらったのよね」
「そうだよ。夫婦だから、同じ苗字になるのは当たり前だろ!」

「韓国ではそうではないわ」
みんな、それぞれの異なる文化を持っている。

「ヘエイー!勉。何か、ハーンのことを、教えてくれよ」
マイクはリクエストした。それにしても、年下のやつに、勉か……。
これも文化の差というものかもしれないが……。
それがかえって気分がいいから、おかしなものだ。

瀬戸大橋を勇気たちは見た。それは立派な橋で、勇気たちの頭上高くにあった。
みんな船室へ下りていく。

勇気はにっこり笑った。
「どうだい、みんな怪談を語らないか?一人ずつ、知っている怖い話をしようよ」
「電気、消してくれよ」

「ひぇー、暗いわ。エッチなことしないでよ」
「ひでー、そんなこと痴漢じゃないからしないぞ」

「蝋燭つけるわよ」
輝代は蝋燭をどこからか出して火をつけた。
そして、皆の輪の中央においた。

そこは、広間で赤いカーペットが敷かれてあって、家具さえなかった。
ここは船室の種類で言えば三等室で、毛布と枕だけで布団もベッドもないところである。

ブラジルのナンシーはしんみりとした顔になった。
レイデのことを話すことができると思ったのである。
このような場なら、話せると思ったのである。
暗闇では、顔ははっきり見られない。それに日常的じゃない……、だからこそ、話しやすいのだ。

「じゃ、僕が最初に話そう。日本で最も有名で最も恐ろしい、四谷怪談という話だ」
勇気は腕をふりあげて話している。

「お岩さんは夫の伊右衛門に毒をもられて、苦しみ、喉をかきむしる……」
喉に手をあてて、もがき苦しむ勇気。オーバー・アクションである。

「うらめしやー!」
あまりの熱演のため、皆は驚いている。
勇気は、ビデオの講談を何度も見て覚えたのである。

でも、驚いていない子どもがいた。それは朝鮮人の李だった。
勇気の講談は終わった。
「怖かっただろう?」
「ええ!」

「お岩さんは、今でも化けて出るそうだよ。
勝手に講演したりしたら、その人たちに祟りがおこるそうだよ」
「祟り?」
「病気になったりするらしい」
「本当、怖いわー」
李は鼻で笑った。みんなは李の顔を見た。








閑話休題

若い人や子どもたちが集まると、
オバケの話しをするのは、
今も昔もかわりがないようですね。

しかし、昔の怪談というのは、
それが教育にもなったという
優れものでした。

今は愉快なだけ……。
いいえ、時には子どもたちに
害になるものもあるという方もいますね。




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