ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 119原発=原爆? 「福竜丸だけでなく、被曝は、戦争が終わった後もあったのよ」 輝代は眉間に皺を寄せている。 「戦争が終わっても……」 「そう、アメリカ人は核兵器の開発を進めたわ」 「イギリスだって……」 「ソ連も、それに対抗した」 「フランスだって……」 「悲しいことに、我が国、インドも……」 行者は手を合わせて祈りはじめた。 「まあ、そう国の代表になるなよ。エリックも話していただろう……。一国では、平和なんてこないのだからね……」 「インドでは、アメリカから原発を買った。そのプルトニウムで原爆をつくった。原発=原爆という公式がなりたつという。しかし、核廃棄物の管理がなっちゃいなかった。そのまま、ドラム缶に詰めて、ドラム缶の蓋はあけたままだった。そこで、子どもたちが自由に入れて遊べた。遊び場でもある処理場なんて、あまりにも無神経すぎる……」 行者は愛のある若者だから、おおいに怒っていた。 マイクたちは、原爆と原発との関わりを、発表することになっていた。 それでいろいろな書物を読み、またインターネットでデータを取りそろえた。 発表の撮影は何の問題も起こらず進んだ。しかしテーマは問題だらけであった。 撮影が終わると、勉は編集に入った。それを手伝う子供たち。 二カ国語で放送するため、日本語の部分は日本人の声優が録音した。 夏八木がみんなに話しだす。 「クイズ番組がありますが、参加したい希望者をつのりたいと思います」 「クイズ番組、賞品とかあるのですか」 中国の金は冷静にたずねた。 「ええ、もちろん、あるわよ」 「だったら、出演したいなあー」 「ところで、クイズはどんなのが出るかわかっているの。学校の勉強のことかしら」 と、ミス・ホームズは冷静に質問した。 「原爆以前の科学に関するクイズなのよ、学力というよりも、雑学かしらね。博士なんて、得意だと思うわー」 「原爆以前の科学?って、そんなの僕もあまり知らないかもしれないなあー。古いことなのでしよう」 「でも、ほかの人たちよりは、博士の方が得意分野だと思うわよ」 「そうかなあー。一応、僕も参加希望します」と博士。 もし、一番じゃなかったら、博士ってニックネームが泣くだろうなあーと、プレッシャーがかかってくる。 韓国の李はにこにこしながら応える。 「歴史なら、案外、私かもしれないわね」 「歴史にしても、科学にしても、僕は苦手だなあー」と、 勇気が嘆くと、みんなは大笑いした。 「だったら、勇気くんは何が得意なの?」 「家庭科! 冗談だよ」 「マイク、アメリカは世界で一番の国なのだろう。参加したら、どうだい」 勉がマイクをからかっている。 もしアメリカが一番としても、マイクが一番であることではないのに、国のことで威張っているマイクを思い知らせてやろうと思ったのである。 単なる意地悪である。 「そんな僕は歴史とか科学なんて、得意じゃないよ」 「まあ、いいじゃないか。アメリカは世界で一番の国なのだからなあー」 博士も皮肉をいった。 「参加者は三人だな。後一人だ。マイク、どうだい」 「仕方がないなあー」 「じゃ、クイズ番組のスタジオへ行こう」 夏休み特集、世界大会「クイズでドンドコ!」と、番組名を見て勇気は吹きだした。 クイズ番組といっても、お笑い番組であったからだ。
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