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「改正国家戦略特区法とは、」

2018-01-17 06:37:44 | 日本

外国人の就農を可能とする「改正国家戦略特区法」が2017年6月16日に参院本会議で可決した。三橋貴明氏が解説する。
以下、要約し記す。



この法律が成立したことで、我が国は初めて外国人を「労働者」として受け入れることになった。農業特区において、外国人を「技能実習生」ではなく雇用契約に基づき受け入れる。より正確に書くと、外国人労働者に対し、国家戦略特別区域「農業支援」外国人受入事業として在留許可を出すことが可能になったのだ。

特区限定とはいえ、我が国が「移民国家化」する第一歩が踏み出されたのである。

もっとも、ご存じのように、すでに全国各地の農地では、外国人が働いている。とはいえ、彼らは「技能実習生」であり、外国人「労働者」ではない。先進国である日本が、アジア諸国から「実習生」を受け入れ、現場で働くことで技能を身に着けてもらう。通常3年、最長5年間の「実習」の終了後は帰国させ、祖国に貢献してもらう。これが技能実習生の考え方だ(建前ではあるが)。

日本はこれまで、外国人労働者、特に単純労働者の受け入れを認めてこなかった。理由は、日本の移民国家化を回避するためだ。「国民国家」である我が国が移民国家に転換する。これは「国の形」の根底にかかわる問題であり、最低でも長期の国民的議論を経る必要があるはずだ。

少なくとも日本は単純労働については「期間限定」という条件を付けてきた。厚生労働省の外国人雇用の届出状況によると、16年10月末時点で、日本で働く外国人は108万3769人。内訳をみると、技能実習生が21万1108人、留学生が20万9657人などとなっている。

留学生も、資格外活動許可を受けることで、週28時間以内を限度とし、アルバイトとして働くことが可能だ。コンビニや飲食産業で見かける外国人店員は、実は留学生なのである。


◎国民的議論なしに成立
 
また、17年3月から東京、大阪、神奈川の国家戦略特区で解禁となった「外国人の家事代行」の場合、外国人メイドの日本における滞在期間は最長3年だ。3年が過ぎると、彼女らは帰国せねばならず、同じ在留資格での再入国はできない。ちなみに、彼女らは外国人労働者ではなく「外国人家事支援人材」と呼ばれている。

さらに、我が国は「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」について「高度外国人材」として受け入れている。高度外国人材にしても、在留期間は5年と設定されているのだ(註・更新はできる)。

かくの如く、我が国は様々な制限をかけることで、「国民国家」と外国人雇用を両立させようとしてきたのである。それが、国家戦略特区に限定されるとはいえ、外国人を本格的に雇用可能な法律が、一切の国民的議論なしで通ってしまった。

農業特区における外国人雇用について、政府は以下の通り説明している。

〈農作業や農業に付随する業務を行う一定の要件を満たす外国人を「特定機関」が雇用契約に基づき受け入れる場合に、在留資格を付与する〉

将来の歴史書には、17年6月16日が「移民国家日本」の始まりであったと記されることだろう。

安倍総理は、保守派の政治家と思われている。普通、国民や国家を重要視する「保守派」の政治家は、移民受け入れに反対するはずなのだが、とんでもない。日本の憲政史上、安倍内閣ほど移民を受け入れた政権は存在しない。12年と比較し、日本の外国人雇用者数はおよそ1・6倍にまで増えたのだ。

ちなみに、「移民と外国人労働者は違う」といった主張は国際的には通用しない。国連は、出生地あるいは市民権のある国の外に12カ月以上いる人を「移民」と定義している。1年以上、我が国に滞在する外国人は、全てが「移民」なのである。

また、山本幸三地方創生担当大臣は17年3月の時点ですでに、農業特区における外国人雇用について、特区以外でも認める規制改革を検討すると表明している。いずれは、全国の農業の生産現場で外国人が雇用されていくことになるわけだ。これが「移民政策」でなければ、一体何だというのか。

なぜ、このような事態になってしまったのか。

それは、安倍政権が本来の「政府の目的」を忘れ、一部の「政商」のビジネスに手を貸してしまったということに尽きる。「政府の目的」とは、ビジネスでも利益でもない。「経世済民」である。国民が豊かに、安全に暮らせる国を作るという精神だ。









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