龍の声

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「孫子の兵法②」

2014-07-31 07:12:18 | 日本

【勢篇】

◎編成・意思疎通・正法と奇法・虚実の運用

大人数の軍隊を統率しても少人数を統率しているように整然といくのは、編成がしっかりしているからだ。
大人数の軍隊を戦わせても少人数を戦わせているようにいくのは、旗やノボリや鐘太鼓のような意思疎通のための設備がしっかりしているからだ。
大軍の兵士がことごとく敵と戦って勝つには、定石どおりの方法と型破りなやり方、双方をうまく行う必要がある。
戦いとなれば石を卵にぶつけるように、たやすく敵を撃破できるのは、敵のスキに乗じて、圧倒的な戦力で攻め込む、虚実の運用によるのだ。



◎正法と奇法

およそ戦いというものは、正攻法ではじめ、型破りな奇法で最終的な勝利をおさめる。うまく奇法を繰り出せるものは、天と地のように極まり無く、黄河や長江の水のように尽きることが無い。
終わってはまた始まることは、四季の移り変わりのようで、死んでまた生まれ変わるのは太陽と月のようだ。音階は五種類に過ぎないが、その五音階の交じり合った変化は、とても聴き尽くせない。
色は五色に過ぎないが、その五色が交じり合って生じる変化は、とても見尽くせない。味も五種類だが、それが交じり合った変化は、とても味わいつくせない。
同じように戦闘の勢いというものも、正法と奇法の組み合わせに過ぎないのだが、その組み合わせによる変化はとても極めつくせない。
正法と奇法がぐるぐる回ってお互いに生じあうことは、まるで丸い輪に端が無いようなものだ。誰がこれを極められようか。



◎勢いと節目

水が激しく流れて、ついに石を押し流すほどになるのが勢いだ。鷲や鷹などの猛禽が急降下してきて、一撃で獲物の骨を砕くのが節(節目)だ。
戦の巧みな者は、その勢いは激しく、そして極限までたかぶった力を一気に解放させる、その節目は一瞬のことである。
弓の弦をぐーっと引き絞って、極限まで引いたところでパッと離して矢を放つ。「勢い」と「節目」とは、そういうものだ。



◎部隊の編成(数)戦闘の勢い(勢)軍の態勢(形)

混乱は秩序から生まれる。臆病は勇敢から生まれる。弱さは強さから生まれる。秩序と混乱を決するのは、部隊の編成(数)による。
勇敢か臆病かを決するのは、戦闘の勢い(勢)である。強さ弱さを決するのは、軍の態勢(形)である。
つまり部隊の編成(数)戦闘の勢い(勢)軍の態勢(形)これらによって、秩序と勇敢と強さが得られる。



◎利益で敵を釣る

敵を自在に操る者は、わかりやすい形を見せれば敵は必ずおびき出されてくるし、エサを与えれば敵は必ず食いついてくる。利益で敵を釣り、騙して待ち伏せをするのである。



◎兵士の個人的気質に頼らず、戦場の勢いによって勝利を得る

戦いの巧みな者は、戦いの勢いによって勝利を得ようとする。兵士の個人的気質には頼らない。だからよく人を選んで、この勢いに乗せるのだ。
そういう人が兵士を戦わせると、まるで木や石が転がっていくように勢いがある。
木や石の性質は、平坦な場所では止まっているが傾斜のある場所だと転がりだす。形が四角ければ止まり、丸ければ転がっていく。
よく兵士を戦わせる者の勢いは、丸い石を千仞の山の上から転がすようなものだ。勢いとはこういうことだ。




【軍争篇】

◎迂直の計

およそ用兵の原則として、司令官が君主から命令を受け、軍を組織し人員を集め、敵と相対して、最終的に戦闘が終わるまでの間で、一番難しいのは実際の戦闘に入ってからである。そこでどうやって勝利を収めるか、という問題である。
実際の戦闘で難しいのは、遠回りがかえって近道になり、弱点が逆に長所になる。そういうやり方である。
遠回りをして敵をエサでおびき出し、人に遅れて出発しながらも最終的には人に先んじて到着する。こういうのが「迂直の計」…遠回りをかえって近道にしてしまうことを知る者のやり方である。
こういうやり方は当れば大きいが、同時に危険もはらんでいる。
全軍で一つの手柄を競い目指せば、動きがスムーズにいかず、結果として敵に出し抜かれることになる。
全軍の利益を考えないで各部隊がそれぞれ行動すれば、足の鈍い輸送部隊は後方に置き去りにされる。
軍に輸送部隊が無ければ敗北する。食糧が無ければ敗北する。財貨が無ければ敗北する。
だから、鎧を脱いで走り、日夜強行軍し、倍の道のりを走り、百里先の功を競うような時は、三将軍すべてが捕虜になる大敗北となる。
元気な一群は突出し、疲れた一群は置き去りにされ、割合としては十人に一人も行き着けばいいほうだろう。
五十里先の目標物を争う時は、上司令官が打たれ、割合としては五割が目的地に行き着くだろう。三十里先なら三分の二だ。
このように、実際の戦闘で勝利をおさめるのは生易しいことではない。



◎諸侯がどんな絵図を描いているか

外国の諸侯がどんな絵図を描いているか、それを知らないでは前もって同盟を結ぶことはできない。
山林や険しい地や沼地など地形の状態を知らないでは軍隊を進められない。道案内を頼まないでは地の利を得ることができない。


◎疾きこと風の如く、徐かなること林の如く、侵略すること火の如く、動かざること山の如し 風林火山

軍隊は敵の裏をかくことが基本である。利益のある無しに従って行動し、分散したり集合したりしながら柔軟に陣形を変える。
その速きことは風のごとく、静かなることは林のごとく、侵略することは火のごとく、 知りがたいことは陰のごとく、動かざることは山のごとく、動くことは雷が鳴るようなものだ。
敵の領土から略奪する時にはわが方の人員をてきぱきと分業させ、占領地を拡大する時には、中央の機能をそれぞれの拠点に分散させ、よくはかりにかけて計算してから動くのだ。
迂直の計…遠きを近きにする考え方を敵より先に知る者は勝つ。これが実際の戦闘行為における原則である。



◎鐘や太鼓、旗や幟

古い兵法書によると、口で言っても聞こえないから鐘や太鼓を使い、さし示すとも見えないから旗や幟を使うのであると。
だから昼の戦には旗や幟を多く使い、夜戦には鐘や太鼓を多く使うのである。鐘や太鼓や旗や幟は、人の目や耳を統一するためのものなのだ。
軍隊がすでにまとまっているなら、勇敢な者も一人だけ突出することは無いし、臆病な者も一人だけさがることはない。
ぐちゃぐちゃに乱れた状況でも自軍は乱れないのである。混沌のように前後不覚な状況でも自軍は規律ある動きが出来、敗れることが無いのである。
これが大部隊を運用する方法である。
敵の軍隊の気力を奪い、敵の司令官の気力を奪うことが大事だ。
朝は気持ちがハツラツとしているが、昼になるとだれてくる。暮れになるともう虫の息だ。だから敵の気持ちが萎えている昼過ぎや暮れ方を狙うのだ。これが敵の気力を操る者のやり方だ。
秩序だった状態で乱れた敵を攻め、落ち着いた状態で混乱した敵を攻める。これが敵の心をうまくあやつる者のやり方だ。
戦場の近くで戦場の遠くから来る敵を待ち伏せ、元気ある状態で疲れ果てた敵を攻撃し、満腹な時に餓えた敵を攻撃する。これが敵の力を操る者のやり方だ。
敵が秩序だっており、陣容も堂々としていれば、そんな相手をわざわざ攻撃することは無い。これこそ敵の変化に従って柔軟な戦いができる者のやり方だ。








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