【7】国民自らが憲法への意思表示をするための憲法改正要件の緩和 (96条改正)
(1)改憲に対する厳しい縛りがあり事実上の改憲阻止条項と化している96条は是正すべ 木であ。
日本国憲法の起草にたずさわったアメリカ占領軍将校に対するインタビューを行なった西修駒澤大学名誉教授は『日本国憲法の誕生を検証する』の中に次のように書いています。「1984年7月、GHQ(連合国聡司令部)で現行憲法の起草に携わったリチャード・A・プール氏にインタビユーした際、プール氏は「私が読んだ報告書に『日本はまだ完全な民主主義の運用に慣れる用意がなく、憲法の自由で民主的な規定を逆行させることから守らなければならない』と書かれていました。私はこの報告書を興味深く読み、そのようなことが基本的人権の改正に関し、厳しい制約を課そうと努めた理由になりました」
このように考えたプール力が作成した憲法改正条項は、下記のようになりました。
『96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。こお承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。憲法改正について前項の承認を経た時には、天皇は、国民の名で、この憲法と一体をなすものとして、直ちにこれを布告する。』
このことは、アメリカ占領軍が憲法草案をつくるときに、容易に改正されることのないような条項を入れたということを意味します。そう考えると、憲法は国民が為政者を縛るためのル--ルであり、 改正条項の緩和は、為政者が自らを縛る縄を緩めるようなものだ、といった話とはまったく様相が異なってきます。96条は改正阻止条項といってもいいくらいです。そういう不幸な生い立ちから憲法を取り戻す、というのが96条改正の趣旨です。
(2)改憲の民意を少数派(参院で81名)が阻止できる国民軽視の条項を改める。
最近の各種の世論調査をみても、国民の多くは、憲法を現実に合うように改正すべきだと考えています。ところが、それが現実にはなっていません。その結果、今では日本憲法は取り残され、世界でもっとも古い憲法の一つになっています。その大きな原因は、憲法改正の手続きが難しい点にあります。憲法96条によれば、憲法改正は①各議院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、さらに②国民投票で過半数の賛成を得なければならない、とあります。この意味は、国民の6割前後が憲法改正に賛成し、衆議院で3分の2以上の国会議員が賛成しても、参議院のわずか3分の1つまり81人が反対したら、改憲の発議さえできないということなのです。
96条を見直すとどうして立憲主義が破壊されてしまうという反対論がありますが、憲法改正は最終的に国民が判断するものである以上、国民が自ら判断することもできないようにしている憲法改正条項は、国民軽視の規定と言わざるを得ません。96条を改正することで、憲法を国民の手に取り戻すことが可能になります。
<了>