大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・オメガとシグマ・40『ハワイ@ホーム・3』

2017-04-04 13:13:13 | 小説

高校ライトノベル・オメガシグマ・40
『ハワイ@ホーム・3』 



 やっぱり日本人なんだ。

 どうなることかと思ったけど、十三人のアメリカ人を前に研修を始めてみると一生懸命になってしまう。


 メイドの第一歩は笑顔と姿勢なんだ。
 日本人は、一般的に笑顔は苦手。
 スナップなんかで「笑って~」と言われて、いい笑顔になれる人はめったにいない。
 はいチーズ! とかやっても虫歯を堪えているような顔になったり、バラエティー番組のようなアホバカ笑いにしかならない。
 だけど、アキバのメイドは違う。
 ソフトで可愛くてちょっぴり上品に笑顔が作れる。
 アキバの萌え文化というのは、ひょっとしたら魔法なのかもしれない。
 @ホームで働き始めたころは妖精さん(社員さん)から「パインの笑顔はキャビンアテンダントだよ」と言われた。
 なるほど鏡に映してみると、大人の笑顔だ。
 大人の笑顔というのは「歓迎はしますがルールに従ってくださいね」というスーツを着たような硬さがある。
 むろんアキバにも無言のルールはある。人に迷惑を掛けたり嫌な気にさせたりしてはいけないとかね。
 でも、スーツにネクタイというような硬さはない。ゆるキャラのユル的な感じ。
 水があっていたのか、あたしは二日で馴染んだ。

「えと、メイドは永遠の十七歳で、夜にはタンポポの毛に掴まって雲の上のお家に帰るんです」

 あせったけど、この言い回しが通じた。イエスとかアンダストゥッドの声が上がる。
 習うより慣れよで、一通りのレクチャーが終わったとは、ご主人様とメイドに分かれてロールプレイング式の実習。
「オカリナセマセ、ゴシュジサッマ~」
 日本語では意味が通じないので英語にする。
「Please return,master」とか「Have a good time,master」とかに訳してみるが、十三人の子たちは納得しない。
「みんなも頑固ねぇ」
 ミリーさんも呆れたが、みんな諦めない。
 けっきょく通じなければ意味が無いということで、二人のメイドが日本語と英語でやるということに落ち着く。


「オカリナセマセ、ゴシュジサッマ~」
「Please return,master」

 なんとかなったところでメイドの制服に着替えてもらう。
 制服には魔法のような力がある。
 十三人の二十六個の目がキラキラしてきた。
 悔しいけど脚が長いし姿勢がいいものだから、私服の時よりも二倍はサマになっている。
「笑顔はタンポポのように」
 ちろるさんが見本を見せるが、みなさんバラとかヒマワリ、中には花の女王ラフレシアかというようなゴージャスな笑顔。
「どうなんだろ……」
 もなかさんが苦笑いになったところでコーヒーブレイク。
「ちから付けていきましょ!」
 ミリーさんが、お皿に山盛りのフライドチキンを出してくれる。ほら、ミリーさんがアキバに来た時にうちの@ホームでこさえてくれて、うちの新メニューにもなっているやつ。
 あたしは思った。このフライドチキンにはバラ・ヒマワリ的な笑顔の方が似合うかもって。

 夕方になってシグマが戻って来た。

 シグマはパールリッジショッピング センターにオタクショップがあると聞いて朝から出かけてきたのだ。
 両手に一杯の戦利品……と思いきや、彼女は手ぶらだ。
「気に入ったのなかったの?」
 そう聞くと、シグマはニンマリと笑った。
「もう着くわ」
 店の外にはワンボックスが停まっていて、オニイサンが何箱もの段ボール箱を台車に移している。
「あ、あれ全部!?」
「まさかーー!」

 運び込んできて分かった。
 シグマはミリーさんに頼まれ、お店の開店祝いにお客さんたちに配る景品を探しに行っていたのだ。
 一部はメイドの子たちへのプレゼント。愛着を持ってもらいたいのでお客さんに配るのと同じものだ。
 仕分けすると何も残らない。
「自分のは買ってこなかったの?」
 頬杖ついたまま目だけ向けて、こう言った。

「だって、ハワイにはエロゲないんだもん!」

 
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