大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時かける少女・15『ピンチヒッター 時かける少女・2』

2017-04-06 06:52:39 | 時かける少女
時かける少女・15
『ピンチヒッター 時かける少女・2』
      

 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になってしまった……今度は1993年の渋谷から始まった。


 ミナコは、科学技術庁の預かりということになった。

 ミナコの持ち物や、身につけているものが、1993年の技術では説明の付かないものがいっぱいあったからだ。

 制服が、当時存在しない学校のものであることは大して問題にならなかった。そんなものはいくらでも作れるからだ。問題になるものは他にあった。


 ヒートテックのシャツ。この時代では発売はおろか、繊維の発明もされていない。
 ナプキンの高分子ポリマーが、この時代のものではない。
 電波式腕時計が、アンテナ内蔵式で、1993年の技術ではできていない。
 スマホの液晶画面が、この時代の技術ではできない。
 アイポッド及び、それに使われている青色発光ダイオードは、この時代では作れない。
 携帯ゲーム機が、この時代の技術を、遥かに超えた技術。

 持っていた千円札が、この時代のD号券(夏目漱石)ではなく、まだ発行されていない野口英世である。
 五千円札も、樋口一葉で、この時代のものではない。
 持っていた貨幣のほとんどが、1993年以降のもの、とくに500円玉は、材質デザインが異なる。

 どうやら、科学技術庁はダミーで、もっと他の組織が絡んでいるらしいが、よく分からない。まあ、ミナコには想定内のことではあったが……。

「どう、なにか思い出した?」
 引き続き、ミナコの身辺警護の沖浦婦警が聞いてきた。ちなみに、女性警官という呼称は2000年にならないと生まれない。
「ううん、なにも……」
 沖浦婦警に、こう答えるのは心苦しかった。
 実は、ミナコはほとんど全てのことを知っている。それは父のピンチヒッターとして、2013年から、この時代にタイムリープするときに、意識コントロールできるように、父が脳の記憶野に手を加えた。

 なんの目的で、この時代に派手に白昼、渋谷のハチ公前をパトロ-ル中の巡査の上に落ちたか。また、この時代に無いものを、ヤツラが不審に思わない程度に持ってきて、今のように隔離されるか。ミナコは全て知っていた。ただ、催眠術をかけても、ポリグラフにかけても、意識の裏に隠せるようになっていた。

 科学技術庁の保護を受けるようになってから、奥多摩の施設に移送された。その場所はミナコには秘密にされたが、スマホのGPSで場所は把握していた。スマホは、ロックがかけられていてミナコ以外には操作できない。ミナコは、担当者の目の前で、シャメの機能だけは披露したが、あとは秘密にしてある。
 担当者は、隙を見ては、スマホを調べようとしたが、セキュリティーがついていて、ミナコの許可無く触ったり、持ちだそうとするとパトカーのサイレン並の音がして、一度試されただけで、二度とは行われなかった。

 青山通りのセダン爆発事故は、原因究明がかなり進んでいた。進んではいたが、分からない事が多かった。
 なんと、このセダンは、自衛隊の90式戦車の榴弾で破壊されていることが分かった。榴弾の破片が出てきたのである。さらに詳しく調べると、同時刻、富士の総合火力展示演習のとき、不発弾として、弾着地点を中心に捜索され、未だに発見されていないものであることが確認され、当然のごとく、この情報は非公開にされた。

「あ、やられた!」

 沖浦婦警は、交代で、自分の実家に戻ってテレビのチャンネルを回して叫んだ。
「どうしたの和子?」
 母が晩ご飯の用意をしながら尋ねた。
「あ、偶然出くわした事故なんだけど、わたし写り込んでるかも……ああ、こんなバカ面で!」
 と、ごまかしたが、むろん自分が、いま関わっていることを隠すためである。

 テレビは、偶然渋谷をロケ中だった、帝都テレビが写していたドラマの収録のバックに写りこんでいた。

 画質は悪いが、空中にミナコが現れ、宮田巡査の上に落ちてくるのが、ハッキリ分かった。編集中に気づいた帝都テレビは、近くにいたお上りさんが、落下直後のミナコや付近の様子、救急車の到着までを克明に撮っていたのを買い上げて、特集番組にしたのだ。
「みなさん、ここに注目してください。彼女の腕時計。拡大できますかね……」
 MCのビートたけしが言うと、時計のアップになった。アナログなので不鮮明だが、メーカーのロゴが分かる。
「メーカーに問い合わせましたところ、このデザインのものは作っていないそうであります」
「どこかのパチモンじゃないすかね?」
「そういう、おまえがパチモン。だいたいこのメーカーのパチモン作る? ほいで、買うかね、女子高生が?」
「でも、その女子高生がさ、こんな制服の高校はスタッフが調べた限り、どこにもないって」
「う~ん、今のお前がいっぱしの芸人で通っているより不思議だけどな。なんと、このかわい子チャン。入院した病院から、忽然として姿を消した!」
 和子は、心配になってきた。どこまで秘密が守れるんだろう。

 和子は、職務を超えてミナコに同情心を持ち始めていた……。

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