大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・連載戯曲『あすかのマンダラ池奮戦記②』

2017-07-16 06:07:17 | 戯曲
高校ライトノベル・連載戯曲
『あすかのマンダラ池奮戦記②』



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あすか: ヌフ、ヌフフフ……フハハハ……やった! やったぜ金の成績! さぞや百点満点のオンパレード、オール五の花ざかり……な、なんじゃこりゃ!? オール零点、オール赤字の落第点……(間)ちょ、ちょっと神さま! 池の神さま!

 池の神、再びあらわれる。

イケスミ: はあいただいま……何かご不審な点でも?
あすか: ご不審、ご不審、大フシン! どういうことよ!?
イケスミ: そういうことよ。言っとくけどクーリングオフはなしよ! それから、神様見送る時は、あなかしこ、あなかしこって言うのが礼儀だからね、おぼえときな! あなかしこ……
あすか: かしこくなんかなってないって! どうして金の成績票が、オール赤字の零点なのよ!?
イケスミ: バカだね。だって落ちた成績でしょ。その金賞だから、一番落ちたオール零点の成績なわけさ。
あすか: そんな……
イケスミ: あすか、あんた変なこと考えていたでしょう?
あすか: で、でもさ、神さまがさ、仮にも神さまがさ。池に落ちると、成績が落ちるをひっかけちゃって、そんなおやじギャグみたいなサギやっていいわけ?
イケスミ: ちょっとまわりの景色を見てくれる……
あすか: まわり……?(二人同様に周囲を見渡す)
二人: ……きったねえ池!
イケスミ: でしょ。みんな人が汚しちゃったのよ、この万代池。
あすか: マンダイ池……マンダラ池じゃないの?
イケスミ: 人が汚してからマンダラになっちゃったのよ……もともとここは、江戸時代に、このあたりのお百姓たちが切り開いたため池。田畑を潤してくれるようにと……
あすか それで万台池か……
イケスミ: その時、あたしは、池の守り神として西の国から、ここに招かれた。以来三百年、陰になり日向になって、この池とまわりの人々を護ってあげて……明日、この池は埋め立てられる。
あすか: そうなんだ……
イケスミ: で、あたしは帰ることにした。
あすか: ひっこし?
イケスミ: やってらんないでしょ、ウンコつきの靴洗われて……
あすか: ごめんなさい……
イケスミ: 汚されまくって、穢されまくって、ゴミほりまくられて……あげくに明日埋め立てられんの。
あすか: ……
イケスミ: ね、だから帰んの、故郷へ。西の国、オオガミさまのもとへ……
あすか: オオガミさま?
イケスミ: トヨアシハラミズホノオオガミさま……そこで、相談。あたしを、大神さまのところへ連れて行ってもらいたい。
あすか: 自分で帰ればア(迷惑そう)
イケスミ: 神には依代がいる。
あすか: ヨリシロ?
イケスミ: ふつうには御神体という、社の奥に祭られている玉とか鏡とか……わたしにはもうそれがない……オオガミさまのもとまで、わたしの依代になってはくれないかしら?
あすか: あたしが?
イケスミ: そのかわり、本当に成績はよくなるようにしてあげる。あすかにのりうつり、その体と脳みそをビシバシ鍛えてあげよう。
あすか: 余計なお世話だ。
イケスミ: いやか?
あすか: やだ!
イケスミ: じゃ、オール赤字の成績に甘んじることね……偏差値もう二十も上げれば、真田コーチと同じ吾妻大うけて、かわいい後輩になれんのにねえ……         
あすか: そんな……まるでサギのキャッチセールス。
イケスミ: 池の神さまだけに、ハメちゃったってか?
あすか: しゃれてる場合か!?
イケスミ: さ~て、どうする?
あすか: ……あたし、行き方なんて知らないし……
イケスミ: 大丈夫。あすかは、その体貸してくれるだけでオーケー。いわばハードだね。ソフトがあたし。
あすか: あたしはゲーム機か?
イケスミ: ほら、わかりやすくメモリーカードにしておいた。こいつを口にくわえて、このコントローラーで……(コントローラーは無線)
あすか: ちょっと待ったあ!
イケスミ: まだなにかア……?
あすか: ほかにもいっぱいいるでしょ、この池のそばを通る人って、それに、今からじゃ無断外泊に……
イケスミ: やってんじゃない、月に一二度。知ってんのよね、親がブチギレル限界を……今月、まだやってないのよね、たしか?
あすか: どうしてそこまで知ってんの!?
イケスミ: 見そこなっちゃあ困るな。神さまだよ一応……それになにより、あたしのソフトは、あすかのハードでなきゃ合わないの。エックスボックスのソフトは、プレステ4じゃかからないでしょ。ほら口にくわえる!
あすか: オオガミさまのとこについたら、すぐに帰してくれるんでしょうねえ?
イケスミ: もちろんよ。あすかの脳細胞もピカピカにしてね。さ、口にくわえるんだよ!
あすか: モゴモゴ……
イケスミ: さあ、いくよ。ミッションスタート!

 閃光と電子音あって、一瞬闇。明るくなると、あすかにのりうつったイケスミ、手にコントローラー、その先の端子は背中についている。   

イケスミ: (あすかの姿)ヌハハハ……冴えわたる頭脳! みなぎる力! これなら故郷に帰ることができる。誰に省みられることもなく、ゴミだめのように埋め立てられる万代池。それを恩知らずな人間どもとともに振り捨てて!……わが故郷、わがオオガミさまの在(い)ますトヨアシハラミズホノサトへ……あれ、手と足がいっしょに出る!? R1ボタン……あれ、くるくる回っちゃう。L2ボタンは左……△ジャンプ……□でしゃがむ……走るはどれだ?……×で駆け足足踏み、方向キーといっしょで……オー! やったァ全力疾走!

 舞台を走り回り、袖に入って暗転(ブリッジ=繋ぎに、この芝居のテーマ曲)舞台転換。鳥の声などして明るくなる。よろよろと歩くイケスミ。

イケスミ: (あすかの姿で)……この体、瞬発力のわりに持久力がない……よくこれでラクロスなんかやってるなあ……ああ、足が棒のよう……もうだめだ(肩で息をしている)あとどのくらいかなあ……山も川も様子が変わって……三百年ぶりだものなあ(虫の声)……ブリ虫?……ああ、わが故郷のヒサシ村のブリ虫の声……あれ、笠松山……こっちのえぐれてんのが伴部(ともべ)山……だとすると、この目の前……鬼岩(虫の声)……ブリ虫……着いたんだ……着いた、着いた、着いた!

 叫びながら舞台を走り回り、袖に入り込む。再びあらわれた時には、あすかと分離している。
ジャンル:
小説
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