大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・オメガとシグマ・59『大江戸放送のスタジオ』

2017-04-24 10:47:58 | 小説
高校ライトノベル・オメガとシグマ・59
オメガのターム『大江戸放送のスタジオ』




 塀に穴が開いただけで済んだ。

 寿屋の小父さんは元消防士で、やっぱプロの火消しは大したもんだと思った。
 家族六人のガスマスクも小父さんが外してくれた。
「ガスマスクってのは一般用がないからね、防災ヘルメットみたいに着脱が簡単じゃないんだよ」
 外してもらった顔には、しっかりマスクの縁の痕がクッキリ。
「キャー、信じらんない!」
 一声あげて家に逃げ帰った菊乃は無事だったが、残り五人はご近所の皆さんや通行人の人たちに写メられてしまった。
「動画サイトに投稿されるわね」
 松ネエの予想は、しっかり当たって、昼過ぎには新聞社と放送局までやってきた。

 で、今日は朝から大江戸放送のスタジオに来ている。

「それでは妻鹿家のみなさんどうぞ!」
 国営放送出身のMCの声が掛かって、俺たちはスタジオの真ん中に進んだ。
 手に手にガスマスクをぶら下げ「どうぞ!」の掛け声で装着する。
 あれから何度もやってみたので、六人の手際はなかなかのもんだ。
「すごい、五秒で装着完了ですね!」
 MCのストップウォッチはきっかり五秒を指している。
 オームサリン事件でも活躍した警察OBのお爺さんがチェックをしてくれて、しっかり合格点をくれる。
「とっさにはキッチリとした装着はむつかしんですが、妻鹿家のみなさんは怪我の功名と言ってはなんですが、しっかりなさっていますね」
「どいうところが注意点なんでしょうか?」
 MCは国営放送の謹厳実直さで訊ねる。
「顔とマスクの間に隙間ができないことが重要です」
「なるほど」
 レギュラーやゲストの皆さんが寄ってきて、しげしげと俺たちのマスク顔を覗き込む。
「さらに重要なのは、ここからなんですが……」
 OB爺さんがいきなり俺のマスクを掴んでグラグラと揺すった。
「お、う、あ」
 3D酔いのようになって、うめき声がもれてしまう。
「人間というのは動きますし表情が有りますので、装着後は、できたら人に揺すってもらったりして確認するのが良いと思います」
「妻鹿さんの家はご家族が多いですからいいと思うんですけど、一人暮らしの人とか」
「そうですね、家族が居てもとっさの時などは」
「ガスマスクってフリーサイズだしい」
 ゲストがいろいろ言う。
「そういう時は、口を大きく開け閉めしていただいて、馴染ませるとよいと思います」
「みなさん、お口の開け閉めを」
 スタジオというのは人を従順にしてしまう魔力があるようで、妻鹿家の面々は、あの気難しい菊乃でさえフガフガとやり始めた。

「お、あ、あーーーー」

 親父が尋常ではないうめき声を上げ始めた。
「あ、これは……」
 OB爺さんは、すぐに親父のマスクを剥がして異変に対処した。
 親父は、マスクの中で大口御開けすぎて顎を外してしまったのだ。

 カクン

 ピンマイクが拾った音は以外に大きく、親父には災難であったけど、スタジオは笑いの渦に包まれた。
 放送局というのは大したもので、アクシデントがあったにも関わらず、予定時間の中にガスマスクを収めてしまった。



※ 主な登場人物

オメガ  妻鹿雄一  高校三年生 その風貌と苗字からω(オメガ)と呼ばれる

シグマ  百地美子  高校二年生 その風貌からΣ(シグマ)と呼ばれる みこが正しい読み方だがよしことも呼ばれる

ノリスケ 鈴木典亮  高校三年生 オメガの保育所時代からの友だち

菊乃   妻鹿菊乃  高校一年生 オメガのツンデレ妹

松乃   杉谷松乃  大学一年生 東京の大学に進学が決まったのでオメガの家に下宿 松ネエと呼んでいる

風信子  宮家風信子 高校三年生 神社の娘で茶道部部長 
ジャンル:
小説
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