大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲『ステルスドラゴンとグリムの森・1』

2017-06-14 06:37:52 | 戯曲
ステルスドラゴンとグリムの森・1

 時   ある日ある時
 所   グリムの森とお城
 人物  赤ずきん
 白雪姫
 王子(アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン)
 家来(ヨンチョ・パンサ)


 幕開くと、夜の森のバス停。表示板と街灯が、腰の高さほどの藪を背景に立っている。
 街灯の周囲だけがなつかし色にうかびあがり、その奥の森の木々は闇の中に静もっている。
 時おり虫の声。ややあって、赤ずきんがスマホでしゃべりながら花道(客席通路)を小走りでやってくる。


赤ずきん: ……うん、わかってる。でも朝が早いから、うんやっぱり帰る……ありがとう。
 婆ちゃんも、近ごろ森もぶっそうだから、オオカミさんにも言ってあるけど、戸締まりとかしっかりね……。
 変なドラゴンが出るから、戸を開けちゃだめよ……え、ああ夜泣き女。
 それは 大丈夫、人間相手だったら赤ずきん怖くない……もう、そうやって人を怖がらせるんだから……。
 じゃあ、またね、バイバイ(切る)……もうお婆ちゃんたら長話なんだから……最終バス……(時時刻表を見る)
 わ、出ちゃったかな……わたしの時計も正確じゃないから……排気ガスの臭いも残っていないし、バスはよく遅れるもんだし……。
 大丈夫よね……なんとかドラゴンに、夜泣き女……。
 オオカミさんも婆ちゃん守らなきゃとかなんとか言って、レディを送ることもしないで……。
 本当は自分がビビってるんじゃん……でも、わたしは強い子良い子の赤ずきん、怖くなんか……

 間、静寂、虫の声も止む。

赤ずきん: ……怖くなんか……

 静寂の中から、女のすすり泣く声が聞こえる

赤ずきん: ……なに、今の……

 森の闇と藪の間に、幽霊のように、顔を手で被って泣いている、立姿の女の影が浮かび上がる

赤ずきん: 出たあ!……(舞台の端まで逃げて、ふと思いつく)
 ……って、ひょっとして、そのコスチューム……ひょっとして、もしかして……あなた白雪姫……?
白雪: (泣いたままコックリする)
赤ずきん: あ、あなたって呼び方むつかしいのよね。思わず白雪姫って、呼びすてにしちゃったけど、どうお呼びすればいいのかしら? ユアハイネス? 殿下? 白雪姫様? プリンセス・スノーホワイト、それともシュネー・ビットヒェン?
白雪: ……雪でいいわ。
赤ずきん: 雪だなんて、まるでそっ気ない冬の天気予報みたい……。
白雪: なら、雪ちゃん。日本で最初の翻訳では雪ちゃんだった。
赤ずきん: 雪ちゃん……?
白雪: 白雪でもいいわ、同じグリム童話の仲間としては。
 でも、わたしとしては、より親しみの感じられる雪ちゃんの方が嬉しいんだけど……。
赤ずきん: ん……でも、それだと対等にわたしのことを呼んでもらった場合、赤ちゃんになっちっちゃうでしょ。
 年上でもあるし……白雪さんてことで……。
白雪: ありがとう、敬意をはらってくれたのね、赤ずきんちゃん。
赤ずきん: どういたしまして……でも、その白雪さんが、どうしてこんなところで泣いているの? 
 ひょっとして近ごろ評判の夜泣き女って……。
白雪: 多分、わたし。このごろ夜になると、こうして泣きながら森をさまよっているから……。
赤ずきん: 白雪さんて、ゲームで言えばミッションコンプリートの一歩手前、九十九パーセントクリアの状態でしょ?
白雪: はい……。
赤ずきん: 無事に毒リンゴ食って仮死状態になり、小人さんたちにガラスの棺に入れられて。
 花屋一件借り切ったぐらいの花に囲まれて、あとはいよいよ待つだけでしょ……。
 その、王子さまがあらわれて……その、いいことすんのが……。
白雪: そんな、いいことだなんて……
赤ずきん: わたしなんか、せいぜい、おばあちゃんがホッペにキスしてくれるぐらいのもんだからね、子供ってつまんない。
白雪: ……



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