大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・55』

2017-07-13 06:21:20 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
はるか 真田山学院高校演劇部物語・55

出版された『はるか ワケあり転校生の7カ月』の原話ノーカット版。いかにはるかは生まれ変化していったか!?


アハハと笑いながら読み、高校演劇の基礎とマネジメントが分かる高演ラノベ! 


『第六章 おわかれだけど、さよならじゃない4』

 一度……東京に戻ってみる。お父さんにもう一歩踏み出してもらうために。

 でも問題が残っている。
 たった二つだけど、とても重要な問題が。
 アリバイ工作……そして致命的なのは資金不足。
 わたしの有り金は、佳作の賞金も合わせて三万ちょっと。
 一泊することを考えると、もう三万は欲しい。
 あれこれ考えているうちに眠ってしまった……。

 目が覚めると結論が、というか覚悟が決まった。
「お母さん、明日から一泊で神戸に行ってくる。由香といっしょ。異人館とかじっくり回ってみたいの、賞金も入ったことだし。」
 わたしってば、順序が逆さま。アリバイと資金の問題は、まだ解決していない。
「そういや、前から神戸のガイドブックなんか見てたわね」

 伏線は、とっくの昔に張ってある。 

「わたしも神戸には関心があるの、はるかのガイドブックで触発されちゃった。ねえ、一週ずらして、わたしと三人で行かない?」
「え……」
 想定外だよ。
「明日からだと帰りが月曜になっちゃう。横浜と神戸を比較して一本書いてみたいの。ね、来週の土曜からにしようよ」
「だめだよ、来週は部活が始まってる」
「そうか残念。まあ、わたしがいっしょじゃ窮屈だろうしね」
「そんなこと……」
「あります。って顔に書いてある。そのかわり写真撮ってきてよ。旧居留地とか異人館とか、リスト作っとくからよろしく」
 取材費ということで五千円のカンパ。やばいよ……。


 と、いうわけで、由香を訪ねて黒門市場。

 アーケードの下にずっと魚屋さんが並んでいる。お魚を焼くいい匂いが立ちこめている。ご飯のすすみそうな街だ。
 由香の勧めで、フグ専門店の横の甘いもの屋さんに入った。
「そうか、そういう訳やったんか……まかしとき、親友の一大事。一肌脱ぐわ」
 夕立のような勢いで全てを話すと、雲間から出てきたお日様のような笑顔で引き受けてくれた。
「まあ、泊まりは無理やけど、日帰りで行ってくるわ。どれどれ、これがリストか……」

 アリバイはこれでなんとか、取材費は四千円に値切った。わたしも大阪人らしくなってきた。


 資金は、「当たって砕けろ」タキさんに泣きついた。
 映画館横のカフェテリアで一通りの説明……というより想いを吐き出した。由香に話すより十倍はエネルギーが要った。
「大人のことに首つっこむもんやない……」
 おっかない……これは失敗かとうつむいてしまった。

「うい……」
 タキさんが、アゴをしゃくった。
 気づくと、二つ折りにした映画のチラシ……そっと開いてみる。
「こんなには要りません……」
「どこで何あるか分からへん、持っていき……そのかわり」
「はい、お皿洗いでもなんでもやります!」
「そんなことやない……」
 タキさんはニヤニヤとわたしの身体をねめまわした。
「な、なにを……」
「無事に帰ってくること。無茶はせんこと……それから、スマホ出し」
「は、はい」
「なにかあったらこの人のとこに電話しい。オレからも電話しとくさかいに」
 と、アドレスを送ってくれた。
「この人は?」
「トモちゃんをオレのとこに紹介してきたやっちゃ」
「お母さんを?」
「共通の知人いうとこや、ちょっと伝法やけど頼りになるオバハンや。写メも送っとくわな」
送られた写メは、モデルさんのようにきれいなオネエサンだった。
「この人が電報?」
「アホ、そのデンポウとちゃう」
「分かってますって、イナセで男気があるってことでしょ。わたしだって江戸っ子のはしくれなんですから」
「大人をなぶんのやない!」
「いて!」
 パンフを丸めたので、頭をポコンとやられた。大橋先生のときと同じ音がした。

 それから、乗る新幹線と泊まりのホテルを決めさせられた。手配はその場でタキさん自身がやった。ホテルの予約は、まるで身内の人に言ってるみたいに横柄。新幹線とホテルの情報を送ってもらって、やっと解放。

 天六の商店街に寄ってあのポロシャツを買って。よくぞ売れずに残っていてくれた(父へのプレゼントだというと、さらに二割引になった♪)それを高安駅のコインロッカーに放り込み、目玉オヤジ大権現を片手拝みにして家に帰った。
ジャンル:
小説
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