大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・25『十七日? 震災? あれから二十年?』

2017-01-30 15:02:23 | 小説4
高校ライトノベル
 音に聞く高師浜のあだ波は・26
『十七日? 震災? あれから二十年?』
         高師浜駅


 これで先代も成仏したことでしょう……。

 デヴィ夫人に似たおばさんは、浅く座ったソファーで背筋を伸ばしたまま話を閉じた。


 そのとたん、空気まで停まっていた時間が動き出したようにため息をついてしまった。すみれも姫乃もため息ついた感じで、普段ならコロコロと笑い出すシュチエーションやねんけど、三人ともかしこまったまま座っている。
 
 阿倍野ホテル最上階の部屋は、お祖母ちゃんと、そのおばさんが主役。

 あれからも、お祖母ちゃんのお迎えは続いている。あいかわらず南海特急のような乗り心地のワンボックスカー。
「お祖母ちゃんも懲りへんねえ……」
 今日からはもういいよ。そう言って家を出たので、もう来ないと思てた。
 白のワンボックスに絡まれて、三人ともビビってしもたんで、お祖母ちゃんには断った。
「え、あ、そうやったかいなあ」
 ボケたふりして、お祖母ちゃんは楽しそうに、あたしらを連れまわした。

 あれから四日。

 もうワンボックスに絡まれることもないので平和なドライブ、あたしらも、再び快適なドライブに慣れてきた。
 ホテルに着くまでは、いつものドライブやと思てた。
 阿倍野ホテルの最上階に着くと、エレベーター降りたとこから、あちこちにダークスーツのおじさんやらお兄さん。
 で、この部屋に案内されると、このおばさんがダークスーツ二人を従えて、ソファーに収まっていた。
「なるほど、あの子らによう似た雰囲気のお嬢さんたちですね……」
 あたしらについては、その一言があっただけ。あとは、先代と呼ばれるお爺さんの話が続く。
「あの子らの送り迎えが、唯一の楽しみやったんですわ」
 どうやら、先代と呼ばれるお爺さんは、孫らしい三人のお嬢さんの送り迎えを生き甲斐にしていたらしい。
「結果的には二人のお友だちを巻き添えに……」
 三人の内二人はお嬢さんのお友だち……あ、あたしらの関係といっしょや。
「あの日は、早朝練習の、そのまた準備のためにむちゃくちゃ早く出たんですわ……」
「その朝に限って、為三さんは運転できなかったんですねえ」
「ええ、家業ののっぴきならない事情でね……あの子たちも先代の車に乗るのを楽しみにしてましたからね……」
「送れないけど、迎えに行ってドライブする約束をしてらしたんですね……」
「俺が死なせたんやと、それは……」
「ま、これで、少しでも為三さんが浮かばれるんでしたら、このあたしも満足です」
 どうやら、為三さんという先代さんが、亡くなっているらしいけど、娘さんと、その友だちの送り迎えをしてあげるのが生き甲斐やったみたい。その車を、お祖母ちゃんが運転して、境遇の似たあたしらを乗せることで為三さんの供養にした。そんな感じ。
 でも、娘さんらは、なんで死んだ? 交通事故?
「震災から二十年、ちょうどいい区切りで往生したと思います。十七日に乙女さんに会えて、ほんまによかったです……」

 十七日? 震災? あれから二十年? それて阪神大震災? なんや、微妙に合わへん。

 お祖母ちゃんは、車のキーを返そうとしたが「どうぞ、供養だと思って、これからも乗り続けてくださいな」
 そう言われて……再びワンボックスに収まっている。
「お祖母ちゃん、阪神大震災やったら、なんやおかしいよ。このワンボックス、どう見ても新車やで」
「トヨタの最新型で、年末に発売されたばかりです」
「フル装備で350万円やと思います」
 親友二人が、いつ調べたんか、つっこんでくる。
「そらそや、年の初めに納車されたとこやからなあ」
「おかしいやろ、お祖母ちゃん」
「為三さんは、この半年ほどはボケちゃっててね、娘さん三人は、まだ高校生で生きてると思てたんやねえ。それで、ちょうど送り迎えに最適な、この車を知って、納車された、その日に亡くなってしもた」
「「そうなんですか」」
「最後の言葉が『はよ迎えに行ってやらなら』やったそうや」
「そうなんや」
 あたしらはしみじみとしてしもた。
「じつは、去年、高石まで来たんよ、為三」
「え、なんで?」
「為やんは、むかしから、あたしの……」
「あ、読者やったん?」
「ホホ、あたしはモテたからなあ……その時に高師浜高校の近所で、あんたらを見かけたんや『乙女さん、さっきかいらしい女学生見かけてなあ』嬉しそうに写メ見せてくれたら、あんたらや」
「そうやったん……」
「帰り際に、また同じ写メ見せよってな……『ほら、これが孫とそのお友だちや』て……」

 そこで話が途切れた。

 ルームミラとバックミラーを合わせ鏡にしてお祖母ちゃんの顔が見えた、お祖母ちゃんが泣いてるのを初めて見てしもた……。
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