大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト『HI・NO・MA・RU・TO・DIE・1』

2016-10-11 07:33:48 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト
『HI・NO・MA・RU・TO・DIE・1』
       


 英語がからきしダメなあたしでも、これはダメだろうと思った。

『HI・NO・MA・RU・TO・DIE』


 でもマーヤこと酒木麻耶(さかき まや)先生は意気軒昂に、黒板に、こう書いた。

 定冠詞のTHEが抜けてはいるが、どう訳しても『死につつある日の丸』であった。
 そのあと、A4のプリントが配られた。

 今度の、総合学習の時間は、イギリス人のゴードン・ピッカリングというお祖父ちゃんの講演だそうで、そのタイトルが『HI・NO・MA・RU・TO・DIE』なのである。でも、偉いイギリス人のエスタブリッシュメントなのだ。きっと深い意味があるにちがいない。それとも元気のない日本の高校生を叱りにくるのか。

 マーヤ先生も最初はそう思った。なんといっても理事長の勧めた講師である。イギリス大使館の書記官を長く勤め、退官したあとも日本に住み続けているという親日家である。
 マーヤ先生は、今年度の総合学習のプロジェクトチームの一員で、今回の講演については全て任せられていた。本人自身英語の教師であり、学生時代は英語力を生かして、アメリカの外資系の企業で正社員並みの働きをして会社のスタッフにも重宝がられた。そのまま就職しても良かったのだが、教職への思いが強く、大学の先生のコネ、いや、強い推薦で、この乃木坂学院高校に就職したのである。
 就職が決まったとき、職場のボスに言うと、ボスは『惜しいなあ、マーヤはうちで採用しようと思っていたのに!』と言った。惜しさ半分、ざまあ見ろが半分だった。でも、マーヤ先生は、それがリップサービスであるとは気づかなかった。あとで会社が採用した学生の履歴と写真を見せられて、そう感じた。今、その学生が、会社のプロジェクト一つを任されるほどのスタッフに成長していることは、幸いにして知らない。

※『』でくくった言葉は英語だと思って読んでください。

「ピッカリングさんは、PCもスマホもダメだからね。直接電話で話をつけてください」
 理事長から、そう言われて電話番号のメモを渡された。
「PCもスマホも使わないなんて……大使館にお勤めだったんですよね」
「だからでしょう。在職中、さんざん、そういうのにこき使われて、いやになったんでしょうな。わたしは分かりますね」
 九十過ぎの理事長に言われては仕方がないので、マーヤ先生は、恐る恐る電話することにした。
 番号から見て、これは固定電話だ。気が重かった。スマホなら気楽にメールも電話もできる。しかし、固定電話というのは、相手はわざわざ立ち上がり、固定電話の場所まで行かなければならない。まして相手は理事長と同年配の老人である。

 プルルルル~を十回聞いて、マーヤ先生は受話器をおいた。

「留守電にもしてないのね。原始人だわ、このジイサン!」
 でも、五回目にやっと繋がった。
『もしもし、わたくし乃木坂学院高校の酒木麻耶と申します。ピッカリング先生でいらっしゃいますか?』
『ああ、おたくの理事長くら聞いてましゅよ』
 ひどい、ロンドン訛りだった。
『で、ご講演いただくお話なんですが……』
『そりゃ、行ってみてくら、シェイト諸君の様子に合わしぇて』
『でも、一応タイトルなどお伺いできると有り難いんですが』
『ん……じゃ、とりあえず。フィノマル、トウーダイとでもしてきゅれませんか』
『は、あの、申し訳ございません。今一度お願いいたします』
『フィ・ノウ・マル・トウー・ダイ……分かったかね』
『復唱いたします。フィ・ノウ・マル・トウー・ダイ……で、ございますね?』
『さよう。よろしゅく』
『あの、お車でお迎えにあがりたいのですが』
『な~に、乃木坂は終戦の年から、何遍も行っとりましゅ。地下鉄でいきましゅ。じゃ彦君によろしく』
『彦君と申しますと……』
『アハハ、あんたとこの理事長しゃんだよ。高山彦九郎!』 
『あ、はい、承知いたしました。では、先生、よろしくお願い致します!』

 そしてマーヤ先生は、メモ用紙に、こう書いていた。
ジャンル:
小説
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