大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・35「アジサイよりも早く」

2017-06-17 11:09:39 | 小説・2
オフステージ(こちら空堀高校演劇部)35
「アジサイよりも早く」
                   




 あれっと思った。

 パパさんが新聞を広げ、雄太さんがタブレットをスクロールして、ママさんとお婆ちゃんがテレビのワイドショー、千代子がスマホ。


 見た目には変わらない朝の食卓なんだけど、それぞれ見ているものが違う、昨日までとは。
 パパさんと雄太さんは連日のキョ-ボーザイとかカケガクエンとかの最新ニュースを見ては親子で言い合いをしていた。
 もちろん深刻な論議になることはなかったけど、やっぱ、日本でも大人たちは、時事問題というか、社会や国のことを考えているんだなあと思った。
 パパさんが広げているのはA新聞じゃなくてスポーツ新聞だ。
 雄太さんのタブレットは、ポリティカルな動画サイトではなくてネットゲームだ。
 ワイドショーはパンダの赤ちゃんとアジサイの名所を特集している。

「千代子はいつも通りやなあ」

 そう言うと、虚を突かれたようにワタワタした笑顔を向けて「アハハハ」と顔を赤くした。
 千代子は彼が出来たようで、スマホでチェックしているのは彼からのメールばかり。もともと朝食でのメールチェックは千代子の日課だけど、メールの相手が彼だと気づいているのは下宿人のミリーだけだ。

「ミリー、気ぃついてたん?」

 駅までいっしょの通学路で千代子が聞いてくる。
「うん、隣に座ってるし、微妙にパパさんママさんから見えへんように画面傾けてるやろ、あたしからは丸見えやねんで」
「あ、えと、しばらく内緒ね」
「分かってるよ、そやけど、パパさんら見てるもんが変わったね」
「え、そうなん?」
 ミリーは朝の食卓の感想を述べた。
「そら、共謀罪成立してしもたしなあ、もう、おもんないんちゃう?」
「そうなんかなあ」
「うん、ミサイルのことも、もうトレンドやないし」
「そうか……」
 ミサイルが発射されて新幹線までが停まったのが、遠い昔のように思われる。

「あれ?」

 立ち止まりはしなかったが、コンビニに目を向ける千代子。
「なに?」
「昨日までは、ミリーのこと見てる男の子らがおったんやけど」
「え、そんなんおったん!?」
「うん、学校の部室棟のことでネットとかに載ったやんか、先週は新聞にも載ったし、あれから密かに注目されてたんやで」
「そんなん、言うてくれやなら!」
「ハハ、そんなガッツかんでも、ミリーはモテモテやろ~し」
「いやあ、そんなことあれへんよ!」

 千代子と上り下りに乗り別れた電車の中でスマホをチェックしてみた。

――アクセス頭打ちにになってきたなあ――
 
 部室棟のことで先週までは、ちょっとしたアイドルという感じだったが、世間は急速に感心を失ってきているようだ。

――まあ、こんなもんやねんやろけど、ちょっと早すぎへん?――

 改札を出ると、植え込みのアジサイが目についた。
 昨日まで青っぽかったアジサイは赤っぽく色を変えはじめていた。

 
ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 高校ライトノベル・ライトノ... | トップ | 高校ライトノベル・新 VARIA... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。