大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・連載戯曲・ステルスドラゴンとグリムの森・5

2017-06-18 06:23:28 | 戯曲
連載戯曲
ステルスドラゴンとグリムの森・5


 時   ある日ある時
 所   グリムの森とお城
 人物  赤ずきん
 白雪姫
 王子(アニマ・モラトリアム・フォン・ゲッチンゲン)
 家来(ヨンチョ・パンサ)



 この時、ヨンチョが衣裳を持ってあらわれる

ヨンチョ: 御衣裳をお持ちいたしました。
王子: ごくろう。

 以下着替えをしながら、ヨンチョが慣れた手つきで介添えする。

赤ずきん: 愛しているならやってごらんなさいよ!
王子: シー、話はそこまでだ。
ヨンチョ: わたしのことならお気づかいなく。
 小鳥のさえずりは聞こえても、殿下の大事なお話は耳に入らなくなっております。
 それが近習と申すもの。でも、いざという時はお役に立ちますぞ。
 申すではありませんか。遠くの親類よりも、近習の他人とか、ウフフ……。
二人: ズコ(ずっこける)
王子: ギャグは言う前に申告するように。おまえのダジャレは心の準備がいる。
ヨンチョ: ……。
赤ずきん: そんなに落ち込まなくても……。
ヨンチョ: 深刻になっております……わかります? 申告と、深刻……アハハ(二人、よろめく)
王子: いいかげんにしろ(着けかけた剣で、ポコンとする)
ヨンチョ: 僭越ながら、森へのお通いは、殿下にとって大事大切な御日課と存じます。
 殿下が森におられる間、森の入口で邪魔の入らぬよう、しっかと目を配っております。心おきなく御考案の上、そろそろ御決断を……
赤ずきん: 王子さま……。
王子: うん?
赤ずきん: 王子さまは、自分でやらなきゃならないことばかり気にかけているわ。
王子: どういうことだ?
赤ずきん: 愛しあっているならフィフティーフィフティー、白雪さんにも、変化と努力を求めなければ。
 そう、王子さまが懸命の努力をなさっているなら、きっと喜んで、我慢もし、努力もするはずよ。
 夫婦というものはいつもそう、病める時も貧しき時も互いに助けあい……結婚式で神父さまもそうおっしゃるじゃない。
 彼女は、その苦労をきっと進んで受け入れると思うわ。
王子: ……そうだろうか?
赤ずきん: そうよ。王子さまが期せずして、ファミリーカーからレースカーへの変貌をとげざるを得ないのなら、
 チャンピオンにおなりなさい! キング・オブ・ザ・レーサーに! そして白雪さんは……。
ヨンチョ: レースクイーンに! よろしゅうございますぞ。ハイレグのコマネチルックに網タイツ、
 大きなパラソルを疲れたレーサーにそっと差しかけて、ひとときのくつろぎを与える……。
王子: レースクイーンか……。
赤ずきん: もう! 変な方向に期待を膨らませないでください! ヨンチョさんも! 
 白雪さんは、見かけ華やかなレースクイーンよりも、ピットクルーのチーフをこそ望むでしょう。
 レース途中で疲れはててピットインした王子さまを、他のクルー達を指揮し、みずからも油まみれになり、
 限られた時間の中で、タイヤやオイルを交換し、ガソリンを注入し、チューニングをして、再びレースに復帰させる。
 白雪さんは、その立場をこそ望み、見事にこなしていくと信じます。
 美しい人形のような妃としてではなく、油まみれの仲間として彼女を愛してやってください……王子さま。
王子: 仲間としてか……ありがとう赤ずきん、迷った山道で道しるべを見つけたように気持ちが軽くなった。
 よし! このこと、この喜びを決心とともに母上に申し上げ、その足で森へ急ぐぞ。二人とも、それまでに馬の用意を……!
ヨンチョ: 馬は何頭用意すればよろしゅうございますか?
王子: おまえの名前ほどに……(いったん去る)
ヨンチョ: 俺の名前ほどに……どういう意味だ?
赤ずきん: ばかだね。ヨンチョだから四丁、つまり四頭という意味でしょ。
 王子さまとヨンチョさんとわたしの分……そして白雪さんの分!
ヨンチョ: なるほど、おめえ頭いいな。
赤ずきん: グリムの童話で主役を張ろうってお嬢ちゃんよ、頭の回転がちがうわよ。

 王子が再びもどってくる。

王子: すまん、馬の数は、おまえの兄の名前の数ほどに修正だ!
ヨンチョ: と、申しますと?
王子: わたしは姫と同じ馬に乗る。鞍もそのように工夫しておけ、では……(緊張して額の汗をぬぐう)
 まず母上から口説かねば……(去る)
ヨンチョ: 女王さまは難物だからな……しかし同じ馬に肌ふれあい互いのぬくもりを感じあいながら……。
 これはやっぱりレースクイーンだべ。

 王子再々度もどってきている。

王子: バカ、変な想像をするな(ゴツン)
ヨンチョ: あいた!
王子: 今度こそ行くぞ、母上のもとへ……!

 王子上手袖へ、ヨンチョがそれに続くとファンファーレの吹奏、ドアの開く音。

ヨンチョ: 皇太子殿下が朝の御あいさつにまいられました!
女王: (声のみ、ドスがきいている)おはいり……モラトリアム……
王子: (うわずった声で)お、お早うございます母上……

 ヨンチョをともない上手袖へ、ドアの閉じる音。

赤ずきん: 王子さま、がんばって……!(手にした王子のガウンを抱きしめている)

ジャンル:
小説
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