大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・時かける少女・30『プリンセス ミナコ・12』

2017-04-21 06:55:43 | 時かける少女
時かける少女・30 
『プリンセス ミナコ・12』 
       

 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になっ。てしまった……今度は2013年の大阪から始まった。なんとミナコはプリンセスに!


 晩餐会後のボール(舞踏会)の途中でミナコは、ローテの後を追ってバルコニーに出た。

 月明かりに見えるローテは、昼間の険しさはなく、意外なほどに寂しげで、美しかった。
「ローテ、いいかしら?」
「なにかしら、プリンセス……候補」
 ローテは、すぐに昼間のニクソサにもどって、横顔で答えた。
「昼間は、大変だったわね」
「なんだ、そのことか」

 ちょっと説明がいる。昼間のヘリコプター墜落事件は、当然ながらローテの一族に疑いがかけられた。なんと言っても、焼けた機体からローテの人形が出てきたのだ。犯人はローテ一族と縁戚関係にあるCU国に逃走。その後の足どりは分かっていない。

「あれは、ローテの家とは関係ないと思っているわ」
「あたりまえよ。うちが絡むんだったら、あんなに見え透いた証拠残すわけないじゃない。あんなのはタブロイド(二級大衆新聞)の、その日限りの客寄せ記事よ。明日になれば、ロイターやAP通信が、正確な情報を流してくれるでしょう。『見え透いたクレルモン家関与説』ってタイトルで」
「じゃ、いったいどこの仕業だと言うのよ?」
「そんなもの分からないわ。それより、今読んでるミステリー面白いのよ。実は被害者が、自作自演したお話」

 そう言った後、二人は沈黙になってしまった。庭の虫の鳴き声だけが際だった。

「虫の鳴き声が涼しげね」
「騒がしいだけ……嫌みじゃないのよ。ミナコは、見かけはミナコ王族の血を引いているけど、日本人として育ってしまったから、この国の統治は無理よ。虫の鳴き声は、欧米じゃ騒音なの……ほら、そのあいまいな頬笑みも、日本以外じゃ通用しないわ。もうアルカイックスマイルの時代じゃないの。王女と言えど、意思ははっきり伝えられなくっちゃ」
「これは、外交的な頬笑みよ。ローテは、日本人を一色で見過ぎているわ。わたしは……うちは、表も裏もない大阪の子やねん。遠慮せんでええとこは、バリバリの本音でいくさかいね」
「ヨーロッパのエスタブリッシュを舐めないで、そのくらい知ってるわ。大阪は軽薄よ。阪神タイガースを応援し続けているなんて、国際的には理解不能。お調子者で、戦時中、あの悪名高い国防婦人会作ったのも大阪のおばちゃんよ」
「国防婦人会?」
「なんだ、そんなことも知らないの。わたしと対で話そうなんて、百年早いわよ」

 やられた、と思うと同時に、直感が働いた。

「ローテ、静かにバルコニーから離れて」
「どうして?」
「もうすぐ、バルコニーが崩れる。気配を感じた」
「うそ……」
「微妙に、バルコニーが傾斜したように感じたの。地震大国の日本人だから分かるのよ……こっち来て!」

 ミナコの真剣さに、ローテはゆっくりバルコニーから離れ始めた。

 ローテが二三歩、ミナコに近づいたところで、バルコニーは音を立てて崩れた。

「ローテ!」

 ミナコの声が夜空に響いた……!

ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 高校ライトノベル・トモコパ... | トップ | 高校ライトノベル・新希望ヶ... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。