大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・メガ盛りマイマイ 19『虫除けクビ!』

2017-07-16 11:00:47 | ノベル
メガ盛りマイマイ 
 19『虫除けクビ!』





 イメチェンしてから噂は二種類になった。

 以前からの彼氏がかっこよくなったというものと、かっこいい別の彼氏ができたという二つだ。


 眼鏡とウィッグを替えただけなんだけど、恵美さんが連れて行ってくれたのは東京でも指折りの専門店。
「先々代様から御贔屓のお店で、戦前は宮内省御用達でございました」
 なるほど、実家の応接間に掛けてある先代と先々代の油絵が、両方とも眼鏡のフサフサ頭なのが納得できた。
 俺が五歳の時まで生きていた祖父さんはタレ目のハゲチャビンで、応接間の油絵は別人だと思っていたもんな。

 ま、噂は二種類とも『カッコいい』という形容詞はいっしょなので、舞は満足していた。

「噂になるんだったら、これくらいでなくっちゃね」とご満悦であった。

 しかし、噂というのは本人に確認しない限り妄想だ。
 噂は妄想という圧搾空気を入れ続けているようなもんで、こんな風に膨らんだ。

――カッコは良いけど、自転車ってのはどーなんだ?――とグレードアップしてしまった。

「自転車というのはダサダサなんだ……やっぱ、バイクか車でなくっちゃね、わたしには釣り合わない」
 舞の欲望も当初の『虫除け』という目的を逸脱して天井知らずになってきた。
「原チャの免許しかねーぞ」
 簡単だけど、ど真ん中から欲望を潰す呪文を唱えてやった。

「いいわよ、あんたじゃ力不足だから」

 その一言で虫除け役から下ろされた。
 舞は克己心というか向上心が強いと言うか、兄の俺から見ても「そこまでやるか!?」というくらいの頑張り屋なんだけど、それが人に向けられると、とんでもなく不遜になって、ジェイソンがチェーンソーを振り回すようにして人の心をズタズタにする。
「虫除けを言い出したのはテメーの方だろ!」
「逆切れ? ウザったいわね。あんたも、もうちょっと自分を磨くってことに気を遣いなさいな。そんな次元の低いところでギャーギャー言うのは、とっても見っともないわよ、人間が小さいわよ」
「んだとー!」
「フン、こんなことでキレないでよ。そのこらえ性の無さで前の学校しくじったんでしょーが」
 俺の心を両断すると、舞は一人で帰っていった。

 それから二日ほどは関根さんと下校している。

 学校で一二を争う美少女コンビ、おまけにどちらもモデルという天下無敵の華やかさ。
――最初から、そーやってりゃよかっただろー――
 俺は、ため息ついて腐るしかなかった。

「隣町の彼氏はフラれたようですね」

 食堂前のベンチででタソガレていると、爽やかな声が降って来た。
「あ、梶山さん」
 虫除けなんちゅうイベントをやる、そもそもの原因が俺の横に座った。
「勝手に買ったけど、カフェオレでよかった?」
 原因は冷え冷えの缶コーヒーをくれた。
「あ、すんません」
「食堂の利益は自販機が半分なんです。余裕のある時は協力しなくっちゃ」
 さすいが前生徒会長。気配りと余裕のかまし方がちがう。

 で……なんで俺に話しかけてくるんだ?

「新藤君は芽刈さんの……」

 そこまで言うと、ゆっくりと俺の方を向いて余裕の微笑みをかましてきやがった。

「えと……」
 ひょっとして、俺と舞の関係をみやぶられたか!?
「僕が、彼女に告白した時も、いっしょの屋上に居たよね?」
「え……それは」

 奴は、核心的な一言を言うために、ゆっくりと息を貯め始めた。

 なんだか、周囲の空気を吸いつくされるようで、とても息苦しくなってきた。
 
 
ジャンル:
小説
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