大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト・真夏ダイアリー・1『真夏のSOUNDS GOOD・1』

2017-06-17 06:30:01 | 小説3
真夏ダイアリー・1
『真夏のSOUNDS GOOD・1』 
      


「真夏!」という声がしたが、今は冬なんだ。 
 
 真夏というのは、わたしの名前。この物語は、この「真夏!」という聞いただけで暑苦しい名前からはじまるんだけど、それはひとまず置いといて、わたしはボールを取りにいく。
 省吾が打った球が大当たり、球はテニスコートの方角に飛んでいく。
 省吾の打球にはテクニックはない。ただ力任せに打ち込んでくる。たいがい空振りになるんだけど、当たれば大きい。「ホームラン王は一番三振が多い」が、省吾のモットー。
 で、今、わたしが投げた甘い球が大当たり……で。

「アイタッ!」になった。
 
 わたしは、テニスコート前の水たまりに張った氷に足が滑ってスッテンコロリン。
「アハハハ」と、省吾と玉男が笑う。
「イテテ……これって笑ってるジョーキョー!?」
「真夏、おパンツ丸見えだったわよ」
 これは、同じ放課後野球仲間の玉男。
「いいもん。ミセパンだから。でも、どうして氷り張ってるとこに打つのよ!」
「だから、注意したろ『真夏!』って」
「遅いのよ、言ってくれるのが!」

 わたしたち三人の奇妙な友だち関係はこの言葉から始まった。

「遅いのよ、言ってくれるのが!」

 そのとき、相手は廊下にひっくり返って、鼻血を流していたんだもん……。
 
 それは八か月前の入学式。

 式が終わって、わたしたちは副担任の福田百合先生に先導されて、教室に向かった。
 都立高校なんで、設備はボロッチかったけど、新入生を迎えるため、心をこめて掃除してあるところに好感が持てた。

 教室について、十分ほど気詰まりで手持ちぶさただった。

 他の教室は、担任が、いろいろ配りモノを持って、続々と教室に向かい、誘導係の副担任と交代している。しかし、このA組の担任はなかなかやってこない。
 あたしたちのA組は校舎の一番階段よりにあって、先生達の移動がよく分かる。
 新採で副担任の百合先生は不安そうに廊下に出て、階段の下の方を覗き込んでは、教室にもどり、緊張から頬を赤くしてまばたきばかりしている。
 五分たって階段を駆け上がってくる足音がした。百合先生に安堵の表情が浮かんだ。しかし、やってきたのは学年主任の浜田先生だった。廊下でなにやら言葉が交わされ、浜田先生は拝むようにして行ってしまった。

「担任の山本先生のお母さんが急病で倒れられたので、わたしが、代わりにやります!」

 百合ちゃん先生のまばたきは、いっそう激しくなった……。
 


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小説
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