大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・トモコパラドクス・99『友子の修学旅行・5』

2017-05-20 06:50:51 | トモコパラドクス
トモコパラドクス・99 
『友子の修学旅行・5』
        

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかし反対勢力により義体として一命を取り留めた。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 久々に女子高生として、マッタリ過ごすはず……今度は、忘れかけていた修学旅行!


#…………神戸、京都

 ビーナスブリッジからの眺めは最高だった。


 大阪湾を隔てて、大阪の街並み、生駒、葛城、金剛の山々。目の前には神戸の街が広がっている。夜になると横浜、函館と並んで100万ドルの夜景と言われるらしい。
「夜に来たかったなあ」
 麻衣がため息をついた。梨香がしきりに、スマホの地図と景色を見比べている。
「なにか探してんの?」
「うん、四代前までは、ここにいたから」
 梨香は華僑の家柄だ、いろいろ日本人には分からない一族の繋がりや、思い出があるんだろう。
「あの洒落たジャングルジムモニュメントみたいなのは?」
 純子の質問。
「あれは、愛の鍵モニュメントじゃ」
 米造ジイチャンの説明では、いつのころからか、このビーナスブリッジに愛のあかしとして鍵を掛けることが流行ったが、多過ぎて美観を損ねるため、鍵かけ専用のモニュメントを作ったということだ。
「なぜ、六甲というか知っとるか?」
 これは全員?である。
「正しくは『むこう』と言った。名残は武庫川などに残っとる」
「むこうって、どこかから見た向こうなんですよね」
 優等生の大佛が良いことを言う。
「さよう、向こうの大阪から見れば、このあたりは向こう側になるじゃろ。こういうところにも、古代の日本の中心地が大阪にあったことが分かる」
 遠望する大阪平野が神々しく見えた。

 その日は、異人館を巡り、神戸の新開地などで、阪神淡路大震災のモニュメントなんか見たけど、震災の時のまま水没状態で保存されているメリケン波止場がショックだった。
「なあに、横浜の山下公園なんか、関東大震災のガレキの埋め立て地の上にできとる」
 この何気ない一言の方がショックだった。

 最終日の京都へは、バスで向かった。

 バスで行くとよく分かる。
 京都という町は、西、東、北を山で囲まれているが南が開けている。
「こんな無防備な場所に千年間も都があったのは、世界史的にも奇跡に近いんじゃ」
「今でも、東京が首都だって法律ないんでしょ?」
 亮介が聞いた。
「ハハ、その通り。しっかり学習しておるのう。日本の都が都城制なのは知っとるだろう」
「はーい!」
 すっかり米造ジイチャンに馴染んだ二十人は小学生のような返事をした。
「秀吉のころに、中国から使いが来てのう。この平安京を見て笑いよった。都城制は中国の都を真似たものじゃが、日本の都には決定的な物が欠けておった。わかるか、そこのハンサム」
 珍しく大佛が口ごもる。
「塀がないんじゃよ。中国は都にかかわらず、大きな街は、みんな高い城壁で囲まれておった」
「あ、ヨーロッパの街なんか、そうですよね」
「秀吉は、見栄っ張りなんで、さっそく、その城壁を作らせた。お土居といってな。今でも京都駅の山陰線のホームの下に遺構が残っとる」
「ああ、あのホームって五百メートル以上あって、日本一長いんですよね」
「さよう。しかし、秀吉が死んだ後、お土居は、さっさと壊された」
「やっぱ、秀吉が作ったからですか?」
「いや、必要ないからじゃ。日本は弥生時代の一時期を除いて、街を外から守るという発想がなかった。日本が世界的に見ても平和国家であった証拠じゃ。そして、都が城壁で囲まれたことは、秀吉の見栄以外には無かった。分かるか諸君?」
 これも、誰も答が出てこなかった。
「古来、天皇家は、民衆と対立したことがない。幕府は倒そうと思われても、天皇家を倒そうとしたものは……おらん。ここから先は、諸君が京都の街で発見したまえ」

 で、京都に着いたら遊びまくって、米造ジイチャンの課題なんか吹っ飛んでしまった。

「ハハハ、その吹っ飛んでしまったところが日本人じゃ。この中で四代以上遡って、ご先祖のことを知っておるのは、梨さんぐらいのもんじゃろ」
「ええ、それもうっとうしいことが、ありますけどね」
「ワハハ、日本も中国も、それで、それぞれいいんじゃ!」

 こうやって、友子たちの修学旅行は終わった……ちょっと困った土産を持って。

 

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小説
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