大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・12『戦車が走ってるよ!』

2016-12-28 12:54:07 | 小説6
ひょいと自転車に乗って・12
『戦車が走ってるよ!』
        


 今日も中河内中学校に向けてペダルを漕ぐ!

 要するに気にいっちゃったのです。
 うちと中河内中学校の標高差は、目測だけど二十五メートルくらい。
 やっと自転車に慣れたばかりの身にはきついんだけど、上っていくというのは気持ちがいい。
 人生には、いろんな上り坂があって、坂道を上っていくほど簡単じゃないことぐらいは分かっている。
 だからこそ、ニ十分ほど奮闘して目的地に着けるのは、なんだか人生の坂道を一つ制覇したみたいで気分がいい。
 そして上りきった170号線から見える下界の姿もなかなかなんです。

「こんにちは! お弁当ですよ!」

 元気に叫ぶと、畑中植木店の職人さんたちが白い歯を見せて喜んでくれる。
 畑中のオバサンは「バイト代出すわよ」と言ってくれたけど、わたしは好きでやっていることだからと笑顔でお断りした。
 それじゃあ……ということで、オバサンはわたしの分までお弁当を作ってくれている。
「オバサンのお弁当って、ほんとうに美味しいですね!」
 職人さんたちと並んでお弁当。
「昔は、外環沿いで食堂出してはったからなあ、そこらへんのファミレスなんかより、よっぽど美味いで」
 石田さんというチーフの職人さんが目を細めて言う。
「どのおかずが、一番好きですか?」
 何気に振ってみた。

「「「「玉子焼き!」」」」

 職人さんたちの声が揃って、みんなで笑った。わたしも玉子焼きが一番好きだ。
「関西の味付けには馴染めなかったんだけど、オバチャンの弁当食ってからファンになったよ」
 東京から来たという葛西さん、若いので一番早く食べ終わる。
「ハーー、食った食った!」
 立ち上がって、葛西さんは大きく伸びをして、なぜだか屁っ放り腰になる。
「えと……食後の運動に行ってきまーす」
 葛西さんは、わたしと視線が合うと屁っ放り腰を止めて、グラウンドの方へ走っていった。なぜか、他の職人さんたちが笑う。
「あいつね、食後屁ぇこく癖があるねん」
「屁!?」
「美智子ちゃん居てるから、ちょっとお上品ぶっとる」
「え、あ、は、そうなんだ(#.ω.#)」
しばらくすると、葛西さんが興奮して帰って来た。
「ちょ、ちょ、ちょ、戦車が走ってるよ!」
「「「「戦車?」」」」
 職人さんたちが一斉に、見晴らしのいいグラウンドの西側に走っていく。わたしも付いて走る。
「外環のほうやなあ」
「あれ、ガルパンで見た、たぶんアメリカの戦車だ!」
「ほんまもんやろか!?」
「なんか、映画の撮影かなんかかな?」
「傍で見てみたいなあ!」
「あ、ホムセンの陰になってしもた」
 職人さんたちは、少しでもよく見えるように、グラウンドの北の方に移動する。
「あ、えと……」
「美智子ちゃん、見たかったら肩車したげるで」
 肩車されてはかなわないんで、正直に言う。
「あれ、うちの家のだから、よかったら後で見に来てください」
「「「「え、ほんま!?」」」」

 戦車が見られるというので、職人さんたちの午後の仕事ははかどった。

 植木職人さんたちの仕事が珍しいので、わたしも、傍で見学してしまう。
 ふと、背後に視線を感じた。
「え…………」
 振り返ると、体育館の角っこに隠れるようにして男の子が立っている。

 その子は、どう見ても、今の時代のものではない服装と髪形をしていたのでした……。
 
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