大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・かぐや姫物語・2・Преступление и наказание

2017-07-14 17:25:03 | 小説5
かぐや姫物語・2 
Преступление и наказание


「ああ、もう、あんなに進んでる……」

 駅のホームに立つと姫子は改めて感じる。


 駅を挟んだ商店街とは反対側にあった工場が取り壊されて、大きなショッピングモールができつつあった。
 完成すれば、シネコンやアウトレット、ホームセンターまで入った巨大な商業施設ができる。当然商店街には脅威である。商店街は背後に大きな住宅街や団地を控えているので、人の流れに変わりはないので、なんとかなるだろう……大人達は、そう楽観していた。
 姫子も、大人達の空気に飲み込まれ、そんなものかと思っていた。いや、シネコンなんかが出来たら、自分でも見に行くつもりでいた。行けばファストフードで食事もするだろう。床面積の広い大型の書店にも、大手のファッション量販店にも足を運ぶだろう。
 商店街の店の娘である自分がそう思うのだ。普通の人なら……商店街の大人たちは楽観に過ぎる、姫子は、そう思った。

 つい夕べ、自分が両親の実の娘ではないと……ほとんど分かっていながら、言われたときのショックのように、ショッピングモールができてしまってからみんな思い知るんじゃないだろうか。

 なんの脈絡もなく、宇宙飛行士の姿が思い浮かんだ。

「おい、かぐや姫!」
 宇宙飛行士が言った……と、思ったら、隣の喫茶ムーンライトの美希だった。

「ああ、美希か……」
「どうしたの、深刻な顔して?」
「……ちょっとね」
「言ってみそ」
「整理つかなくて。よかったら放課後話聞いてくれる?」
「あ、うん、いいよ」

「なんだ、そんなことか」

 放課後、部員が自分一人だけの文芸部の部室でもある図書室の分室で、姫子は「重大事件」を話した。
「姫子だって、気づいていたんでしょ?」
「まあね、でも実際親から言われるとショック。今朝は、ろくに朝ご飯も食べずに出てきちゃった」
「そうか……姫子のことは、うちの親も知ってる。あ、むろんいい話としてだよ。豆腐屋の秀哉も知ってる。商店街のお馴染みさんもね。でも、もう当たり前ってか、十七年も前の話だし、姫子は、当たり前に家具屋の姫子で定着してるよ」
「でも……戸籍謄本見せられて、じかに言われるとね」
「分からないでもないけど、姫子は赤ちゃんのころから立川の娘なんだからさ、普通そうにしてなよ。ま、修学旅行から帰ってくるころには、元の普通に戻ってるよ。『ただ今』『お帰り』で済んじゃうよ」
「……もっかい、言って」
「え、『ただ今』と『お帰り』?」
「その前」
「えと……普通そうに、かな?」
「そう、それ。無理して普通にしなくていいんだ、普通そうでいいんだ!」

 で、もう一つの話をした。今度は美希が暗くなった。

「そうか、そうだよね……うちの商店街ピンチなんだ……」
「うん。大人たちは、予想される結果から目を背けているだけみたいな気がする」
「かもね……」

 学校の帰り道、駅まで二人は暗かった。

「お、家具屋と喫茶店」

 駅のホームに上がると、豆腐屋の秀哉が準急待ちをしてホームに立っていた。
 秀哉は、もう一つ向こうの各駅しか停まらない都立高校に通っている。姫子たちの櫻女学院よりも偏差値で8ほど低いが、秀哉は、なかなかのアイデアマン。稼業の豆腐屋が正直経営が苦しかった小学校の高学年のころ、親に、こんなアイデアを出した。
「この商店街、練り物屋がないから、天ぷらなんか兼業したら」
 これが当たって秀哉の豆腐屋の利益の半分は天ぷらが占めるようになった。
 それだけではない。秀哉は家にあった茶碗に適当なエピソードを付けて『とんでも鑑定団』に出たり、NHK素人喉自慢に出たりして、その都度店と商店街のPRをやってのけた。で、高校生のくせにテレビのディレクターに知り合いが何人かいて、下町のB級グルメ番組を商店街に呼んできたこともある。

「なるほどなあ……」

 さすがの、秀哉も沈黙した……準急がくるまでは。

「そうだ、こんな手がある!」

 準急の中で、秀哉は、とても二流都立高校の生徒とは思えない、有る意味無責任なアイデアを言った。

 地元の駅に着く頃には、三人の幼なじみは、その気になってしまった!

  つづく

ジャンル:
小説
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