大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・秘録エロイムエッサイム・19(年の初めのエロイムエッサイム)

2017-02-24 06:47:13 | ノベル2
秘録エロイムエッサイム・19
(年の初めのエロイムエッサイム)



 真由のヘブンリーアーティストは年末の二日で危なくなった。

人が集まりすぎるのだ。

 大晦日は、比較的に広い上野公園だけでやったが、三万人の人が集まり、他のアーティストが出来ないばかりか、通行の妨げになるというので、警察から申し入れがあったのであある。
 あの山田プロディユーサーのオジイチャンも、地下鉄の男子高校生も観に来てくれていたが、警察の言うことももっともなので、その場で山田プロディユーサーと話して決めた。
「他のアーティストさんや通行の妨げになるので、今日は、これで終わりにさせていただきます。その代り、うちの大江戸放送で流させていただきます……」
 オーディエンスの人たちから残念なため息が、いっせいに漏れた。ため息も三万人分になると、まるで上野の山全体がため息をついたようだ。
「むろん、ライブもなんとかいたします。お客様と直接交流していただけるような機会を、できるだけ早く大江戸放送が責任をもって行いますので、よろしくお願いいたします」
「みなさん、ごめんなさい。そしてありがとうございます。朝倉真由を、たった二日で好きになっていただいて、本当にありがとうです。急なことなので、あたしもビックリ、シャックリです。ヒック!」
 真由は、ほんとうにシャックリが出てしまった。これでオーディエンスの人たちが和んだ。
「ヒック! そういうわけなので、ここは解散します。ご通行のみなさん。他のアーティストのみなさん、ほんとに、ヒック! ごめんなさい。すみませんでした。ヒック!」
「がんばれ、ビックリシャックリ!」
 オーディエンスの中から応援の声がして、大晦日は、なんとか無事に乗り越えた。

 それからが大変だった。

 急きょ、元日の放送をやりくりし、番組の中や間に真由の歌を入れる工夫がされた。そして、スタジオからではあるが、動画サイトでライブで流し、ネットでリクエストされた曲を次々に歌っていった。間のMCも曲のアナウンサーと二人でこなし、延々六時間もぶっちぎりでやり遂げた。

「おい、視聴率の幅が、こんなに揺れてるぞ……」
 紅白の後始末をしていたNHKのエライサンたちが首を捻った。いつも歌手によって時間ごとの視聴率は上下するのだが、その関連性もなかった。むろん裏番組の『ガキの使い』との関連性もなかった。
 NHKのコンピューターは優秀である。
 二十分ほどで結論が出た。紅白の視聴率が落ちた時間は、大江戸テレビが、番組をやりくりして、真由の曲を流した時間帯と重なることが分かった。
「恐るべき新人が出てきたものだなあ……」
 紅白の総合ディレクターは、その結果を見て、ため息をついた。
「特に男性に人気があるようです。昨日の白組優勝も、男性視聴者を持っていかれた気配があります」
「来年は、この子を呼ばなきゃならないかもしれないな……」
 統計係から結果を聞かされたNHKのエライサンたちは頷きあった。

「ええ、いつの間に、こんなブログが出来てんの!?」

 元日の昼に帰宅した真由はパソコンを点けてびっくりした。
『真由のビックリシャックリ』というタイトルで、ブログが出来ていて、アクセスが十万を超えていた。

「あたし。がんばって前に出なきゃ!」

 振り返ると、炬燵でミカンの皮を剥きながらウズメさんが、こともなげに言った。
「ヘブンリーアーティストのつもりだったんだけど……」
「あたしも、そのつもりだったんだけどね。真由、あんた元々才能っちゅうか、魅力があるのよ。芸能の神さまが言うんだからほんとだよ」
「でも、いいのかなあ……なんだか乗せられた気もするんだけど……」
「これが、回りまわって日本を救うことになるんだ」
 清明さんが、ウズメさんの口を借りて喋った。
「と、いうことで、がんばろう」

 ウズメさんが、きれいに剥いたミカンを真由に差し出した。なんだか白雪姫に毒りんごを渡す魔女のように見えた。

ジャンル:
小説
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