大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ライトノベルベスト[OSAKA FANTASY SEKAI NO! OWARI]

2017-07-01 06:11:43 | ライトノベルベスト
ライトノベルベスト
[OSAKA FANTASY SEKAI NO! OWARI]



 八戸ノ里は、八戸の農家から発展した。

 どうしようもない湿地帯であったところに、江戸時代七戸の農家が移住してきて、最後まで残っていた一戸の農家を中心に開発をすすめ、豊かな農地にした。

 田島精機の社長は、この話が大好きだ。

 八戸ノ里(ヤエノサト)などと言っても、メジャーではない。東大阪の東の外れ、近鉄奈良線が通るが各停しか止まらない。昔は町工場が多く、小なりと言えど工業地帯であったが高層団地が増え、昔ながらの工場は、ほんの一握り。東京で言えば荒川区の南千住あたりに似ている。
 田島精機は、そんな零細企業の一つである。ほとんど手作りと言っていい測定器の製造……の下請けを細々とやって生き延びてきた。
 社長の勲(いさお)は、似たような生き残りの会社七社と手を組み『チームYAE』を作り、その技術を持ち寄って「世界をアッと言わせるようなモノを作ろうといきごんでいた。
 人工衛星のマイド一号には後れを取ったが、このたび目出度く世界的防犯設備『セワヤキ』を開発。自主実験を百回近く繰り返し、今日、大阪府知事、各市町らが集まり、公開実験を行った。

『セワヤキ』は監視カメラのように設置され、半径数百メートルの人々の良心を増幅させる機能があった。計測器と脳波測定器、それにゲーム開発の技術が結集されている。
「人間は犯罪を犯す前には、わずかではありますが良心の呵責があります。この呵責を眠らせるために『自分だけとちゃう』という言い訳催眠を自分の脳にかけます。それによって良心は委縮し、犯行にいたるわけであります。この『セワヤキ』は、呵責の気持ちを増幅させる機能があります。駅前で実験したところ、街頭犯罪が1/20に激減いたしました!」

 そのあとの実験が良くなかった。

 いや、最初は順調だった。ボランティアの人たちに「自転車を盗め」と告げておき、自転車100台の前に立たせたが、誰一人自転車を盗めなかった。
「たとえ実験とは言え、人のモノを取ってはいけないという気持ちがあります。それが増幅されたのです」
 それから、AV女優に頼んで盗撮の実験もやってみたが、誰一人、盗撮できたものはいなかった。
「また、これは機能を一点集中させたもので、逃走する犯人、犯行中の犯人に照射しますと良心をマックスにして、自ら逃走、犯行を中断させます」
 これは、人体実験が出来ないので、コンピューター相手に使われた。ウィルスを感染させようとしているパソコンに照射すると、なんと、パソコンは自分で、全てのデータを消去し、シャットダウンしてしまった。この機能はゲーム開発の社長のアイデアと技術が生きていた。

 が、最後が良くなかった。

 知事や、市長、公募校長などに無作為に悪いと思われる政策や政治方針を書かせて、テーブルに置いた。そして、百メートルの距離を置いて、それを取らせにいかせたが、全員が自分で書いた書類を手に取った。
「こ、こいつら人間とちゃう……!」
 勲たちは思ったが、実験は失敗と判断された。

 やけになった勲は娘の幸子が操縦する軽飛行機に乗って八尾空港を飛び立ち、大空で思い切り「アホ、バカ、マヌケ、ゼイキンドロボー!」などと憤懣のありったけを大空に向かって叫んだ。まさに獅子吼であった。
「お父ちゃん、その馬力で市長さんらにも文句言えたらよかったのにな」
「あんなに政治家どもが無神経やとは、思えへんかった!」
 同乗のゲーム会社の社長が歯ぎしりした。
「あ~あ、オッサンらは、権力には弱いねんからな」
「何ぬかしとる、幸子、もっと早う、もっと高う飛べ!」
「軽飛行機には限界の高さがあるんよ。ちょっとなにすんのん田部のオッチャン!」
 ゲーム屋の田部がコパイロットの操縦桿を優先にして操縦し始めた。こういう裏技はゲーム屋ならではである。

 そのとき、無線機から緊急放送が入った。

「近畿管区の上空を飛んでいる全ての航空機に伝達。KC国が発射した核ミサイルが大阪上空に接近中。自衛隊、米軍ともに迎撃に失敗。着弾まで、二分、至急退避! 至急退避!」
「なんやと……」
「田島はん、絶好のチャンスや!」
「くされミサイルにいかれてたまるか!」
 田部はGPSで着弾予定地を大阪城の真上と割り出し、方位、高度をとった。

「見えた、あれや!」

「ウワー、世界の終わりや!」
 幸子は泣き喚いたが、オッサンたちは冷静かつ、果敢であった。
「距離2000、エネルギーマックス! くらえ!!」
 田島は、ミサイルに照準を合わせ、渾身の一撃をミサイルにくらわした!

 ミサイルは空中で一回転したかと思うと、急にヒョロヒョロになり、そのまま大阪城の大手門前に落下し、グシャグシャになった。

 政府の発表では、ミサイルの故障で起爆しなかったと発表があり、だれも『チームYAE』の功績であるとは認めなかった。
「これで、ええんじゃ。世界 NO! 終わり! にでけたんやさかいな……」
 チームYAEのメンバーは、祝杯ともヤケ酒ともつかない酒盛りをやった。

 日本政府が気づいたのは、アメリカの軍事産業が八戸ノ里に通い始めてからだった。

 田島たち『チームYAE』がどう動いたかは、大阪のオッサンにしか分からない……。

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小説
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