大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・乃木坂学院高校演劇部物語・31『第七章・3』

2016-10-17 05:42:39 | 小説7
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・31   



『はるか ワケあり転校生の7ヵ月』姉妹版


 この話に出てくる個人、法人、団体名は全てフィクションです。


『第七章 涙を乾かすには優しすぎて……3』


 ……薄暗がりの中、ぼんやりと時計が見えてきた。

 リモコンで明かりをつける……まる三日眠っていたんだ。
 目覚めると自分の部屋。当たり前っちゃ、当たり前なんだけど、なんだか違和感……。
「あ」
 小さな声が出た。目の前に倉庫から命がけで持ち出した衣装が掛けられていた。
 わたしと潤香先輩の舞台衣装。セーラー服と、花柄のワンピース。ベッドから見た限り、傷みや汚れはなかった。四日前の舞台が思い出された。なんだかとても昔のことのように思い出された。潤香先輩もこうやってベッドに寝ている。もう先輩は意識も戻って……何を考えているんだろう。わたしはもう起きられるだろう。二三日もしたら外出だってできるかもしれない。しかし先輩はもう少し時間がかかるんだろうなあ……よし、良くなったら、この衣装持ってお見舞いにいこう。そう思い定めて、少し楽になる。

 ん……まだ違和感。
 あ、パジャマが新しくなっている……新品の匂いがする。着替えさせてくれたんだ、お母さん。
 ……まだ違和感。ウ……下着も新しくなっている。これは、お母さんでも恥ずかしい。

「あら、目が覚めたの?」
 お母さんが、薬を持って入ってきた。
「ありがとう、お母さん。着替えさせてくれたんだね」
「二回ね、なんせひどい汗だったから。シーツも二回替えたんだよ。熱計ろうか」
「うん」
 体温計を脇に挟んだ。
「お腹空いてないかい」
「う、ううん」
「そう、寝付いてから水分しか採ってないからね……」
「飲ませてくれたの?」
「自分で飲んでたわよ。覚えてないの?」
「うん」
「薬だって自分で飲んでたんだよ」
「ほんと?」
「ハハ、じゃ、あれみんな眠りながらやってたんだ。ちゃんと返事もしてたよ」
「うそ」
「パジャマは、わたしが着替えさせたけど、『下着は?』って聞いたら『自分でやるからいい』って。器用にお布団の中で穿きかえてたわよ」
「そうなんだ……フフ、やっぱ、なんだかお腹空いてきた」
「そう、じゃあ、お粥でも作ったげよう」
「あの衣装、お母さん掛けてくれたの?」
「ああ、『衣装……衣装』ってうわごと言ってたから。目が覚めたら、すぐ分かるようにね。今まで気づかないと思ったら、そうなんだ眠っていたのよね」
「ありがとう、お母さん」
 ピピ、ピピ、と検温終了のシグナル。
「……七度二分。もうちょっとだね」
 そのとき、締め切った窓の外から明るいラジオ体操が流れてきた……ちょっと変だ。
「お母さん、カーテン開けてくれる」
「ああ、もう朝だものね」
「あ……朝?」
 カーテンが開け放たれると、朝日がサッと差し込んできた。
 わたしは三日ではなく、三日と半日眠っていたことに気がついた。
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