大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・連載戯曲・エピソード 二十四の瞳・8

2017-08-09 06:00:05 | 戯曲
連載戯曲・エピソード 二十四の瞳・8
       

時  現代
所  東京の西郊

登場人物

瞳    松山高校常勤講師
由香  山手高校教諭
美保  松山高校一年生


 明かりが入ると、瞳のミニクーパー。キャスター付きの椅子を角材と床板になる板で結びつけたようなものでいい。
 方向転換や移動は黒子による。BGMが、タイヤのソプラノにかわる。


瞳: ヒヤッホー! 聞いた、今のドリフト! タイヤのソプラノ!……
 ほら、もういっちょうS字カーブ(右に左にドリフトし、タイヤがキュンキュン、歓喜の声をあげる)たーまらん!
由香: た、頼むから、もうちょっと穏やかに走ってもらえない。
 わたし、車弱いとこへもってきて、アルコール入ってるから……ウップ。
瞳: 仕方ないわねえ。ほらヘド袋、車の中汚さないでよ。
由香: ……大丈夫、飲み込んだから。 
瞳: うわあ、息がヘド臭~い。ほら、ウーロン茶と口臭消し。            
由香: ありがと……。                              
瞳: 大丈夫?
由香: うん、普通の運転になったから大丈夫。
瞳: つまらねえな……。
由香: つまらないのは、こっちだわよ!
瞳: へいへい、安全運転、安全運転……。
由香: ねえ、さっき言ってたペンションの話って、本気?
瞳: あたりき、しゃりきにブリキのバケツよ。
由香: 真面目に。
瞳: あたしは、いつも真面目だよ。
由香: それじゃ言うけど、ペンションって御客つくまでが大変だって言うよ。
 こんなこと言って失礼だけど、軌道に乗るまでは海のものとも山のものとも……。
瞳: 山のものってきまってるじゃん。
由香: え?
瞳: だって長野県だもん、山しかないよ。
由香: 真面目に。
瞳: だから真面目だって。
 姉キのペンションは、前のオーナーが歳くって引退するからそのあとを譲り受けての経営。
 だから、固定客が最初から付いてんの。あたしも姉キも元を正せば、その固定客の一組だったんだけどね。
由香: なるほどね、瞳なりの固い計算があった上での話なんだ……。
瞳: あたりまえじゃん、一回ポッキリの人生だもん、いろいろ考えた末の結論よ、
 ヘラヘラしてるようでも考えるとこは考えてんのよ……ほい着いた(急ブレーキ)
由香: ゲフ……痛いでしょ、急ブレーキかけたら。シートベルトが食い込んじゃったよ。
瞳: 見てごらん、この山頂からの東京の夜景……。
由香: うわあ……。
瞳: もうちょっと晴れてたら、都心の方まで見えんだけどね。

 

瞳: あたし、この夜景見て決心したんだ。
由香: この夜景で?
瞳: うん、この夜景の下にあたしはいない……。
由香: え?
瞳: だって、見てるあたしは、この山の上。
由香: ハハ、そういう意味? でも、そんなの簡単じゃん。
 山から下りて、家の明かりの一つもつけたら、この素敵な夜景のワン・ノブ・ゼムになれるじゃん。
瞳: 千三百万分の一のね……デジカメの画素以下。あたしなんか、いてもいなくてもいっしょ。
由香:タソガレ通り越して、暗闇じゃんよ。
瞳: 違う、楽になれたのよ。
由香: え?
瞳: あたし一人が抜けても、この夜景には何の影響もない……
 だったら、あっさり抜けちゃってもいいんじゃないかって。
 そしてそれなら、学年末まで義理たてなくても、きりのいい二学期末でおさらばしてもいいんじゃないかって……
 あたしがいなくても辞めてく奴は辞めてく。
 多少もめることにはなるかもしれないけど、この千三百万の明かりの、ほんの一つのささやかなエピソード
 (歌う)ケ・セラ・セラ、なるようになる……と、アララ……。
由香: どうしたの?


ジャンル:
小説
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