大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ライトノベルベスト・真夏ダイアリー・3『花の命は短くて……』

2017-06-19 06:18:03 | 小説3
真夏ダイアリー・3
『花の命は短くて……』
        


 あーヤダヤダ……!

 なにがヤダって、明日から期末テスト。
 テスト二日前ってのは、少し気が楽。なんと言っても明日はテストの前日で、授業は昼まで。それが楽しみ。
 ところが、そのテストの前日になると、わたしにも猿以上の想像力ってのがあって、明日の試験に勉強……の真似事程度のことはしなくちゃならない。
 ドシガタイってほどバカじゃないけど、なんにもしないで試験受けて点数とれるほど賢くもない。中間じゃ二個欠点とってるし、一応の挽回ははからなくっちゃならない。

 どうも、高校に入ってから調子が悪い。

 中学じゃそこそこいけてた。フェリペは無理だとしても、専願なら乃木坂学院ぐらいは入れた。 
 乃木坂学院の制服は、かつて『東京女子高制服図鑑』にも載ってたぐらいいけてる。で、行きたかったんだけど行けなかったのは我が家の事情が……いまは言いたくない。

「今日、どうする?」

 省吾が、窓の外で唸っている電線を見ながら聞いてきた。
「昨日は、あんなにポカポカだったのにね」
「じゃあさ……」
 玉男の提案で、いつもの三人野球を止めてカラオケにいくことにした。

 エグザイルとももクロでもりあがり、いきものがかりでシンミリ。次のAKBで落ち込んだ。

「どうした、真夏。なんかノリ悪いぞ」
「うーん……なんだか真冬に『真夏のSOUNDS GOOD!』てのもね……あら、カラ」
 飲みかけのオレンジジュースがカラになっていることに気が付いた。
「なんかドリンク注文しようか?」
「いい」
「久々に、入学式でからかわれたこと思い出したか?」
「あれは、もう終わったって。大杉ともテキトーだし……」
「じゃ、整理……」
「あ、生理……」
「ばか、そっちのセイリじゃねえよ」
 省吾が玉男をゴツンとした。
「真夏は、整理のついてないことが、ゴチャゴチャなんだよな」
「ま、そんなとこで理解しといて。わたし、お母さんに用事も頼まれてたから」
「そんなつまんないこと言わないでよ」
「ま、おれ達も、お家帰ってお勉強すっか。玉男、明日の試験覚えてっか?」
「えーと……」
「玉男の好きな家庭科と化学と現文。じゃあね」
 ワリカン分のお金を置いて、わたしは木枯らしの街に出た。省吾は、わたしの気持ちを分かっている。話せば、なにか結論めいたアドバイスをくれそうなことも分かってる。でも、今のモヤモヤを人に整理されたくない。それに、そんな相談を省吾にしてしまったら、気持ちが省吾に傾斜してしまいそう。わたしたち『お名前おへんこ組』は、あくまで、オトモダチのトライアングルなんだから。

 今日のお使いは、なじみの花屋さん。

 うちのお母さんは、花を絶やさない。
 前の家にいたころからずっとだ。鉢植えが多かったけど、今は名ばかりのマンションなので、生け花ばっか。以前は、お母さんが自分で買ってきた。でも仕事をやり始めたので、花屋さんに寄る暇がなくって、夏頃からはわたしの仕事。

「あら、なっちゃん。もうお花?」

 花屋のオバサンに聞かれて、気が付いた。ほんの二週間前に山茶花を買ったばかりだ。
「山茶花って、長く咲いてるんですよね?」
「うん。ときどき水切りとかしてやると、一カ月はもつわよ」
「五日ほど前に、元気ないんで水切りしたとこなんです」
「……まあ、部屋の湿度とか、日当たりとかの条件もあるから。で、今度は、どんなのがいい?」
 そう言われて見回すと、まわりはポインセチアで一杯だった。クリスマスが近いんだ。うす桃色の蕾を付けた鉢植えが目に付いた。
「これ、なんていうんですか?」
「ああ、ジャノメエリカ。これは切り花にしないで、鉢植えがいいわ」
 小振りだったので、窓辺でも育つと聞いて、それにした。
「高く伸びちゃうから、枝先切っとくわね……」
 オバサンは、ていねいに枝を選んで、枝先を切ってくれた。
「花屋の言い訳じゃないけどね、花って、一方的に愛情をくれるの……だから、受け取る側が、吸い取り紙みたいになっていたら、花は愛情注ぎすぎて早く萎びてしまうのよ……」
「そうなんですか?」
「うん。それに、今のなっちゃんて、花でなくっても分かるわよ……」
「そ、そうですか」
 わたしは急ごしらえの笑顔になった。
「まあ、お花に話してごらんなさい。そんな歯痛こらえたみたいな笑顔しないで、いろんな答をくれるから」
 オバサンは、ぶら下げて持てるようにしてくれた。代金を払って出ようとして振り返った。
「こないだの山茶花の花言葉ってなんですか?」
「赤い山茶花だたわよね」
「はい」
「ひたむきな愛」
「……ひたむきな愛」
 ジャノメエリカも聞こうって思ったけど、気が引けた。オバサンの顔が「自分で調べなさい」って感じがしたから。

 で、家に帰って調べてみた。

 ジャノメエリカの花言葉は、孤独だった……。


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