大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・時かける少女・33『プリンセス ミナコ・15』

2017-04-24 06:50:02 | 時かける少女
時かける少女・33 
『プリンセス ミナコ・15』 
      

 昭和二十年四月、前月の大空襲で肺を痛めた湊子(みなこ)は、密かに心に想う山野中尉が、沖縄特攻で戦死するまでは生きていようと心に決めた。そして瀕死の枕許にやってきた死神をハメた。死と時間の論理をすり替えて、その三時間後に迫った死を免れたのだ。しかし、そのために時空は乱れ湊子の時間軸は崩壊して、時のさまよい人。時かける少女になっ。てしまった……今度は2013年の大阪から始まった。なんとミナコはプリンセスに!


 岩の隙間から覗くその顔は、死亡宣告が出されたばかりの父、ジョルジュ皇太子そのものだった。

「ひょっとして、お父さん……!?」
 その後は、言う間もなく、ミナコは、ローテと共に岩場の死角になっているところに引っ張り込まれた。

「攻撃中止! 王女とローテ嬢が人質になった!」
 ダニエルが、無線でダンカン大佐やNATO軍に伝え、戦場は膠着した。

 今までの銃砲撃の音がピタリと止み、波音だけが静かにリフレインしている。

「あたし、写真やビデオだけでしか見たこと無いけど……お父さんなのね?」
「わたしは、ミナコ民族解放戦線のゲオルグだ……」
 無機質に呟いた父には、左腕が無く、右のこめかみに大きな傷跡があった。
「あんたたち、お父さんに、何かしたのね!?」
 ミナコは、とりまきのゲリラたちを睨んだ。
「三年前の戦闘で大けがをしたんでね、おれ達が治療して、お勉強していただいたら、こんな風に心を入れ替えっちまったのさ」
 ゲリラたちの仲間が忍び笑いをした。父の皇太子は、あきらかにロボトミー手術され、洗脳されていた。
「じゃ、ゲオルグ。その岩に立って演説してくれるかい」
「分かった」
 父ジョージは、ミナコを岩の上に立たせ、その横に立ってマイクを握った。まず、ミナコが喋った。
「みんな、間違っても撃たないで。この人は、あたしのお父さん、ジョージ皇太子よ!」

 味方の陣地に動揺が走った。

「……本物か?」
 ダニエルは、パソコンの情報と取り込んだダンカンの映像を照合した。
「どうだ、ダニエル!」
 ダンカン大佐がせっついた。
「外見的な特徴はピッタリだ……」
「そう、あとは、声紋分析だなダニエル。わたしは元ミナコ公国皇太子のダニエルだ。今は、悪しき因習を乗り越えて、ミナコ民族解放戦線の司令官ゲオルグになった。古き王制を倒し、新しい人民の国家を打ち立てるために、わたしはたちあがった」

 かつての皇太子の姿に、兵士達は銃口を向けることができなかった。

「ダニエル?」
「本物だ……しかし、マインドコントロールをされている。目に昔の光がない」

「要求する。ただちに王制を廃止せよ。そしてミナコの国を人民に引き渡せ。さもなくば、ここにいるローテとミナコ王女の命を奪う」
 ジョ-ジは、銃口をローテに向けた。
「……これ以上身を晒しては、スナイパーの的になる。岩陰でじっくり返事を待とう」
 ジョージは、ミナコとローテを岩陰に引きずり降ろし、自分も身を隠した。

「お父さん、考え直して、お父さん!」
 ミナコは必死に父に訴えかけたが、父は蛇のような目で見返すだけだった。
「ミナコは、どうも事態の理解が出来ていないようだな」
 そういうと、父はホルスターから拳銃を取りだし、なんのためらいもなくローテの左腕を撃った。
「ウッ!」
 ローテの苦悶の表情。
「どうも、拳銃の音では、みんなに聞こえないようだな……マイクを貸せ」
 銃声は、特殊部隊の集音声の高いマイクで拾われて、ダンカン、ダニエル、NATOの各部隊が、水中から岩場を目指した。
「今から、ローテの処刑を行う。しっかり、この小娘の断末魔の叫びを聞いてやれ!」
 ジョージは自動小銃の安全装置を外した。
「た、助けて……王位継承権なら放棄するから」
「もう遅い。おまえはただの生け贄だ……」

 ジョージが銃を腰だめにした。三つの部隊は静かに岩場に近づきつつあった……。

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小説
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