大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・47「エリーゼのために・2」

2017-07-11 12:05:58 | 小説・2

高校ライトノベル・オフステージ(こちら空堀高校演劇部)
47『エリ-ゼのために・2』




 お茶を飲み終えるとなんだか恥ずかしくなってきた。

「あ、いや、どうもしょーもない話やなあ」
「そんなことないですよ」
 交換留学生らしいブロンドの女の子が柔らかく言ってくれる。
「タイトルの『エリーゼ』と転校生の三宅エリ-ゼさんが重なったんですよね」
「それで脚本も一気に書き上げ、お人形もできたんですよね」
「うん、まあ、そうやねんけどな。谷口は書きあぐねてしまいよってな……ま、先走った人形の方が先に出来てしもた」
「うまく行かなくなったんですね、人形のイメージが先行してしまって」
 年かさの子が核心をついてきた。
「ああ、そうやねん……ごめん、もう一杯もらえるやろか」
「あ、はい、すぐに入れます」
 車いすの子がトレーで受けてくれ、お茶をたてなおしてくれる。
「ごめん、出がらしの二番煎じでよかったのに」
「いいえ、わたしたちも飲みたかったですから」
 
 お茶が飲みたかったわけではない、話を整理したかった。
 同じ空堀高校の生徒ではあるが、この四人は四十三年後の高校生だ……ふさわしい話し方をしなければならない。

「そんで、谷口は三宅エリ-ゼと付き合い始めよった」
「「「うわー!」」」
 女の子三人が歓声を上げた。
「あのころは、演劇部で台本書きいうと、ちょっとかっこよかった。オタクやいうて差別されることもなかったからね」
「本は書きあがったんですか?」
「……結果的には書きあがらへんかった。谷口も本書くことより、エリーゼと付き合うことに熱中し出してね」
「リア充って、そんなもんですよね」
 年かさがため息をつく。
「ぼくらも本に注文つけ過ぎたんやけどね。注文とか変更は人形にも回ってきてね、あれこれ手を加えてるうちに……なんやグロテスクなもんになってしもてね。ヤケクソの大変更になった」
「大変更ですか?」
「うん、わやくそのなってエリ-ゼが腐ってしまう話になったんや。あ、もちろんお話やから、比喩としてね」
「船頭多くして船山に上るというやつですね」
「うん、最後は、舞台に載せた時に腐敗臭がしたらおもしろいいうことで、スルメやらの干物使うて臭い出る仕掛けにしたんや」
「「「「あーーーそれで!」」」」

 四人はトランクに仕舞ったミイラに目を向けた。

「年月が経って、ほんまの腐敗臭になってしもたけどね。まあ、あのころもたいがいの臭いやったけどね」
「「「「アハハハハ」」」」

 四人は明るく笑ってくれる。屈託のない笑い声は若さだろう。まことに羨ましい。

 そのときトントンとドアがノックされた。
「はい」
 ブロンドの子が応対に出る。
「すみません、薬局の……あ、あんた。根ぇ生やしてしもて、傘持ってきたげたよ」
「あ、すまんエリーゼ」

 瞬間空気が固まった。

「もういややわ、昔の言い方して」
「あの、エリーゼ?」
「いえいえ、この人のてんご。お話のケリついたら、はよ帰ってきなはれや」

 それだけ言うと、老妻にして薬局の看板ばばあは一足先に帰っていった。

 
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