大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・かぐや姫物語・5Преступление и наказание・罪と罰

2017-07-17 18:03:55 | 小説・2
かぐや姫物語・5 
Преступление и наказание・罪と罰


――立川姫子さん、AKR合格の感想を!――

 雑誌社の電話が最初だった。
「え、うそ……!」
 というのが、姫子の答の第一声だった。

 たしかにAKRから郵便は来た。ただA4の書類が一枚だった。
――この度は……――
 この四文字を見ただけで、姫子は不合格と思い、丸めて屑籠に放り込んだ。

 合格の知らせなら、その後の手続きや、スケジュールなどについて書かれた書類が一杯同封されていると思ったからだ。姫子は受話器を肩と首の間に挟んだまま、屑籠をひっくり返した。
「ありました……うそ、本当に合格してる!」
――ハハ、だから電話させていただきました――

 合格通知には、次に事務所に来る日時しか書いていない。学校や役所のような無駄なことはしないようだ。

 雑誌社にはどう答えたか覚えていなかったが、その後テレビや新聞の取材まで来た。
『かぐや姫、AKRに入る!』
 だいたい、そんな見出しで、マスコミには騒がれた。
 明くる日には、まだ正式に研究生になったわけでもないのに、AKRの代表光ミツル会長とともに、テレビのバラエティーにまで引っぱり出された。

「あそこまで、めちゃくちゃに言って、受かるとは思いませんでした!」

 MCの兄ちゃんの質問には、ごく素直な答が出た。それだけでスタジオは笑いに包まれた。
「この子の表現力と、地元商店街への愛情が決めてでした」
 光会長も端的に、決定理由を言った。
「もう少し、具体的に言っていただければ、どういうことになるんでしょうか?」
「この子、見た目には可愛くないんです。こちらも、ありきたりの可愛さは求めてないんです。でも、自己主張しはじめると、光るんですね。筋も通ってるし、圧倒する力があります。で、圧倒しながらもチャーミングなんですわ。まあ、あの演説は再現できんでしょうから、審査の時の課題曲やらせてみましょう。姫子、審査の時のままやってみ」

 で、いきなり課題曲のイントロが流れ出した。姫子は、マイクを手渡されると、ごく自然にADの指示なんか無視し、スタジオの真ん中に向かいアドリブで踊って、歌い出した。

 スタジオが、どよめいた。

「姫子、今の、うちの曲じゃなくってAKBの曲だって忘れてるだろ?」
「え、そうだったんですか!?」
「ちょっと、仕掛けてみたんですよ。演説だけじゃメンバーにできませんからね。商売敵のAKBをかけたら、どうするかと思って。で、今みたいに見事にやってのけました。普通AKRの審査でAKBの曲が流れたら動揺しますでしょ。ところが、こいつは、そうじゃない。気づきもしないでヌケヌケとやってしまいました」
「え、あ、いや、どうしよう、あたし……!?」
 スタジオは爆笑に包まれた。
「そういう大きなとこで抜けてるのが、一番気に入ってる」
 会長が締めくくった。

 実は、AKRの親会社の意向とも一致していた。ショッピングモールを作って、地元の商店街に圧力になるという姿勢を取りたくなかったのである。そこに、当の商店街の家具屋の娘がAKRに入れば、話題性も、商店街との親和性も出てくる。ただ、光会長は親会社の意向などには頓着していなかった。

 ただ姫子は面白い。そういう理由で合格させた。

 姫子の頭に、また宇宙飛行士の姿が浮かんだ……。

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小説
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