大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・ひょいと自転車に乗って・11『八尾市立中河内中学校』

2016-12-24 13:02:09 | 小説6
ひょいと自転車に乗って・11
『八尾市立中河内中学校』
        

 ちょっと、あかんがな!

 自転車の手入れしていたら、畑中のオバチャンの大きな声がした。
 畑中さんちは、外環沿いに並ぶうちのお隣りさん。大きな植木屋さんをやっていて、敷地はうちよりも広い。
 ゲート(うちは門ではなくゲートという)を出てみると、オバチャンが『畑中植木店』と荷台に書かれた軽トラの前で仁王立ちになっていた。運転席には悪戯を見つけられた子どものような顔をしたオッチャンがハンドルを握っている。

「どうかしたんですか!?」

 お隣りさんの一大事に、わたしは頭のてっぺんから声が出た。
「みっちゃん聞いてよ、うちのオッサンが車の運転するて言いよんねん!」
「は、はあ」
 植木屋さんなんだから、車にだって乗るだろう……困惑していると、オバチャンのもっともな怒りの声が続いた。
「先月免許返納したとこやねんよ!」

 脳みそがスパークした。

 運転免許返納するのは、お年寄りだ。それも、ブレーキとアクセルを踏み間違ったりのリスクが大きいチョーお年寄り。
 畑中さんのオッチャンもオバチャンも、まだそんな歳じゃないと思っていた。
 でも、いまの言葉を聞いて、二人をマジマジと見ると、意外に歳を取っているようにも見えてきた。
 たとえばディズニーのCGなどで、キャラが一気に老けてしまうような感じ。
「オッチャン、そんなお歳なんですか?」
「はいな、天皇陛下の一個うえ」
「え、八十四!?」
 せいぜい六十代の真ん中くらいに思っていた。二人とも威勢がいいので見誤っていたんだ。
「中河内中学、ほんそこやで!」
「遠い近いの問題やない!」
 オバチャンの言う通りだ、無免許では一メートルだって走っちゃいけない。

 冷静になって訳を聞くと、こういうことだった。

 朝、職人さんたちが中河内中学の植え込みの仕事に行ったんだけど、お弁当を忘れてしまった。
 それで、オッチャンが使い慣れた軽トラで届けようとしてトラブっているのだった。
「あ、あのー、だったら、わたしが届けましょうか?」
 なか中学という名前で、ごく近所だと思って手を上げた。
「え、でも、ちょっとあるよ……」

 ナビで見た限りは遠くなかった。

 ナビでは二次元の距離しか分からない。
 外環の信号を渡るといきなり上り坂。そう、中河内中学は、いつかは行ってみようと思っていた、外環状の東側なのだ。
 いつかというのはいつかなんで、今日のことではない。でも、引き受けたんだから行くっきゃない。
 四人分のお弁当は重くはない、ペダルの重さは自分の体重。
 二百メートルほど行くと交差点。ナビは直進しろと言っているけど、北に曲がる。

 東高野街道だ……!

 大坂夏の陣では、この道を北から徳川の軍勢が攻め上ってきて、八尾一帯で合戦になっている。真田丸の最終回で言っていた。
 そーだ、ここから西に向いたら大正飛行場の府道21号線で、その南に木村重成のお墓があるんだ。
 数少ない八尾の地理的知識が3Dになっていく。
 信貴線の低いガードを潜ると、田畑が目立つ。よく見ると目立つってほどじゃないんだけど、珍しいので目立つと感じてしまう。
 ミキハウスの本社が近所にあるみたい。でも、うっかり立ち寄ったら、肝心の目的地に戻れる自信が無い。
 中河内中学は、もうすぐだ。

 え……ないよ。

 大きな高校の建物は見えるんだけど、中学校らしきものが見えない。
 公立学校というのは、どこでも似たような建物と規模で、近くにくれば分かるもんだ。
 わたしは地図に弱い方だけど、こんなにトチ狂ってしまうことはない。
 わたしは高校を中心にグルグル回った。

 パオーン!

 クラクションに脅かされて、道路脇に寄った。
 幸い、なにかの入り口になっていて、幅四メートルほどの門扉の前は五坪ほどの車寄せで、身を寄せるには十分だ。

 え?

 何気に看板を見てビックリした。

 八尾市立中河内中学 と黒地に金文字が光っている。

 え~~~~~ここぉ?

 なんか常識を超えている。
 四メートル幅の門の向こうは、その幅のまま七十メートルほどの下り坂。
 下り坂の突き当りが……さっきの高校の校舎の横っ面。

 おずおずと自転車をして坂を下る。
 校舎の横っ面の向こう、植え込みの中で、見覚えのある植木職人さんたちが仕事をしている。
 ミッションコンプリートだ。

 職人さんたちに聞いて分かった。
 中河内中学は、中河内小学校と合併になり小中一貫校になって、この春に開校したばかり。
 元々は、ここにあった府立高校の敷地と校舎をそのまま使っているので、並の中学校を思い浮かべるとビックリする。
 おそらく日本中にここだけだろうと思われる、長細くて下り坂になってる入り口は、府立高校として建てられた時、正門と考えていた土地が買収できなかったために、変則的な形になってしまったということらしい。
 だけど、高安山を仰ぎ見るロケーションは、なんだか奈良の郊外みたいで、探検のし甲斐がありそう。

 ちょっとワクワクしてきたよ。 
ジャンル:
小説
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 高校ライトノベル・ライトノ... | トップ | 高校ライトノベル・タキさん... »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。