大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・音に聞く高師浜のあだ波は・14『敦子もマッタイラ』

2016-12-10 10:58:58 | 小説4
高校ライトノベル
 音に聞く高師浜のあだ波は・14
『敦子もマッタイラ』
         高師浜駅


 あんなマッタイラは初めてやった

 マッタイラの眉毛は離れすぎた八の字で、なんともお気楽でエエ加減な男いう感じや。うちのお祖母ちゃんなんかは「植木等の生まれ変わりや!」などと言う。要は調子のええ無責任男いう三枚目キャラで壁際男子の中ではモブ男中のモブ男。

     

 それが「ええねん どーせあたしはマッタイラや!」と泣きながら走って来た妹を追いかけてきた時のあいつは真剣やった。

 真剣すぎて、あたしら三人と出くわしたことにも気ぃついてなかった。
 それにマッタイラいうのは、あいつ『松平正友』の絶壁頭のことで、妹が「ええねん どーせあたしはマッタイラや!」と叫ぶようなものやない。

 なんや見てはいけないものを見てしもた感じで「なんやのん、今のは」と、すみれが言うただけやった。

 
 きょうマッタイラとすれ違うのは三回めや。
 いつもはヘラヘラしながら一言二言いらんことを言うていきよる「ブス」とか「スカートめくれてる」とか、小学校の頃はほんまにスカートめくられたりもした。盲腸の手術のあとは「あそこの毛ぇ剃ったんか?」なんぞと言いにくるやつや……それが無言や。気色がわるい。
 三回めの今は、女子トイレから出てきてすぐやった。
 不覚にもハンカチを忘れたんで、手ぇ洗わんと出てきたとこ。
 トイレで手ぇ洗うと、出てきてもポケットに手ぇ突っ込んでたり、まだ手が湿ってますいう感じがするんやけど、あたしは無防備やった。一学期にも、こんなシュチュエーションがあって「ホッチ、手ぇ洗ろてないやろ!」と声高に言われた。
 無言ですれ違て、一拍置いて呼び止められた。

 ホッチ

「な、なんやのん!」
 不覚にも声が裏返ってしもた。
「ちょっと聞いてほしいねんけど……」
 こんなマッタイラは初めてや。

 思い詰めてるみたいで、マッタイラは、そのまま話始めようとする。

 なんぼなんでも、トイレの前はないやろと、階段の下まで行った。
「こないだ見られたから分かってるやろけど、敦子が落ちこんどるねん」
 ああ……あの時は気ぃついてなかったんと違て、余裕がなかったんや。これは重い話やろなあ。
「敦子て、妹のことやね」
「うん、あいつ、いま中学でイジメに遭うとんねん」
イジメ……?
 思わず声を潜めてしまう。
「俺のあだ名は『マッタイラ』やんけ」
「え、あ、うん」
「俺はけっこう気に入ってんねんけどな……敦子は気にしとんねん」
「えと、あんたのあだ名を?」
「ううん、最近は、敦子も『マッタイラ』て呼ばれてんねんて。中学いくようになって、敦子とはあんまり喋れへんねんけどな。こないだの誕生日に、ちょっと兄ちゃんらしいとこ見せたろ思て」
「ああ、ドラミちゃんのフィギュア?」
「あの時は世話になったな……敦子喜んでくれて……ほんで、ポツリとイジメられてることを言いよったんや」
「『マッタイラ』て呼ばれてること?」
「うん」
「……せやけど、敦子ちゃんは絶壁頭とちゃうやろ?」
「あいつのマッタイラは、頭と違て、ここや」

 マッタイラは自分の胸を押えよった。「ここ?」と、あたしは自分の胸を押えた。

「うん、あいつも年頃やねんなあ……」

 つまり、敦子ちゃんは、自分の胸のサイズというかカタチというかでイジメられているようなのだった。
 
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