大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・あたしのあした・35『黒のローファー』

2016-10-16 14:46:37 | 小説
高校ライトノベル
あたしのあした・35
『黒のローファー』
      

 根拠が有ったわけじゃない。

 なんとかなるだろうと思っていただけ。

 
 ただ、マスコミへの対応を、みんながバラバラにやったら誘導されてしまってヤバイことになると思っていた。
 そして「あたしに任せろ!」と胸を叩いておけば、みんな安心するとも思った。
 毎朝テレビの女性レポーター姫野姫子に声を掛けられた時も、どう対応するかは考えていなかった。
 話しているうちに相手の意図をくみ取り、その意図を土台の所でひっくり返してやればいいと思いついたんだ。

 で、映像ではなくて、実際に補講の現場を見て判断させるのが一番だと思いついた。

 水野先生は学校によって、実質的な謹慎処分にされている。
 あたしたちが、いくら騒いでも先生の謹慎が解けることは無い。どっちかって言うと逆効果だ。
 だから姫野のオネーサンを焚きつけて、補講が再開させれば開けてくる道もあるというものだ。

 あたしってば、いつの間に権謀術数の子になったんだろう……ほんのこの間までは、引きこもりの果てに死ぬことを考えていたのに。

「恵子、会ってもらいたい人がいるんだけど」
 昼休み、ネッチに声を掛けられた。
「うん、いいよ」
 相手がだれかも聞かずに返事する、ネッチの緊張が弛む。あたしに信頼されたことで気が楽になったんだ。
 意識はしていなかったけど、これは相手の心を掴むための手練手管なんだなあと思う。

 放課後連れていかれたのは、商店街にあるネッチのお店だ。

 商店街を西から入ると直ぐに爽やかなお茶の香りがする。
 ネッチの家である『創業安政六年 静岡茶 せきね屋』の看板が見えてきた。
「あら、いらっしゃいませ」
 ネッチのお母さんが、業務用半分親しみ半分の挨拶をしてくださる。
「こんにちは、茶々さんのクラスメートで田中恵子と申します……」
 頭の中では「この度は、学校のことでいろいろと……」などと長ったらしい挨拶が浮かんでいたが、らしく見えないと、高校生らしいところで区切った。
「お母さん、もう見えてる?」
「ええ、お座敷の方でお待ちしていただいているわ」
「じゃ、いこっか」
 暖簾をくぐって案内されると、一坪ほどの中庭を隔てた別棟の関根家の住居部分。

 玄関に入ると、それだけで真面目な人柄が偲ばれる黒のローファーが目に入った。
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