大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・連載戯曲『梅さん⑩』

2017-07-13 06:03:04 | 戯曲
連載戯曲『梅さん⑩』        


ふく: わかった?
二人: ふくさん!?
ふく: 平四郎さんて、梅さんの初恋の人。
: ちょ、ちょっとふくさん。 
ふく: フフ、話しには何度も聞いてたけど、いい男だったわね。
: あ、さっき感じた気配?
ふく: あ・た・し、ヘヘ、でも渚ちゃんも良い勘してるよ、梅さんの決心間違ってないと思うよ。 
: ありがとう。で、平四郎さんて?
ふく: 旧制一高の学生さん……いつも通学途中の坂道ですれちがっていた……そうだったよね?   
: ……
: デートとかは?
ふく: とんでもない……一度だけ……
: 一度だけ?……
ふく: 今変なこと想像したでしょ?
: う、うん……
ふく: 正直でよろしい。でも、そういう刺激的な想像が先にたつようじゃまだまだね。
: は、はい。
ふく: 一度だけ……平四郎さん、脇に抱えた辞書をおっことした。それを梅さんが拾ってあげたことがある。
: 勉強家なんだ。
: さあね……でも、それで間垣平四郎いう名前が知れた。
「あの……落としましたわよ……」
 「ありがとう……君、白梅女子の?」
 「はい、佐倉梅と申します」
 「そう……ありがとう佐倉君」
 「どういたしまして……」
 「じゃ」



: ……それで?
: それだけ。
: それだけ?
: 卒業間近い、ちょうどこんな梅の季節……
ふく: そして、それが桜に変わり、八重桜も散った新緑の頃……お見合い、そして結婚。
 そして次の梅の季節に雪ちゃんが生まれて、そして、その年の新緑のころ死んじゃったのよね。
: ……そんなにあっけなく。
: よくあった話よ、昔は。
: 梅さん……
: え?
: サクラって苗字だったんだ……
ふく: そう、佐倉惣五郎の佐倉。
: え?
: 人偏に左って書く佐と、倉敷の倉。わたしの旧姓。
: でも、耳で聞くとサクラウメ、春の妖精みたいだね……
: ありがとう、でもわたしは水野梅よ。たった一年ちょっとだったけど、わたしは今でも水野梅……渚のひいひい婆ちゃんよ。
: ありがとう……
ふく: じゃ、私はこれで……
: マレーネは、うまくいった?
ふく: ヘヘ……また二人きりの時にでも……じゃあこれで、大事に生きるんだよ渚ちゃん。
: はい……
: 一つだけ聞くね。
ふく: なに?
: ドイツにもその格好で行ったの? たしかブランデンブルグ門の近くだったわよね?
ふく: もちろん。
: やっぱし……
ふく: じゃあね(消える)
: ふくさん……悲しそう。
: そうわかっただけでも成長ね。でも、渚が同情しても解決にはならないからね。
 今夜はよっぴき二人で飲み明かすわ……それより平四郎さんはね……

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小説
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