大橋むつおのブログ

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高校ライトノベル・ライトノベルセレクト・一週間物語・4〔木曜日はモックモク!〕

2016-10-01 06:41:10 | ライトノベルセレクト
ライトノベルセレクト・一週間物語・4
〔木曜日はモックモク!〕



 今週は一日交代に天気が変わる。まるで青春の乙女心だ。

 あ、いま笑ったの誰!? 

「妙子は高校生離れしてて、しっかりものだ!」そう読み込んだ人は読み方が浅いです。行間に現れる乙女心分かんないかな!

 え、やっぱり、そうは読めない。雄介の告白を上手くさばいたとこや、小暮先生とのやりとりなんて高校生とは思えない? 昨日の「シャキッとしてスイッチオン」なんて、心の奥ではビビってる証拠なんだよ。カラオケで雄介とファーストキスやっちゃったことも、今朝起きたら自己嫌悪「あたしは、いわゆる女子高生とは違うんだ!」という前のめりな思い込みがとらせた単なる向こう見ず。
 高校演劇は嫌いだ。去年から、そう感じてた。それなら、最初から主役になんか就かなきゃよかったんだ。
「役者として、すごいとこ見せてやろう!」って助べえ根性があったことも確か。「間尺に合わなきゃ辞めます!」というのは、アンダースタディー(代役)をあらかじめ決めていたとしても、どこか卑怯だ。

 こういうモヤモヤしたことは、ベッドに入ってから始まる。やるときには「これしかない」と思いながら、そうした夜は醜いモヤモヤにやられる。
 今朝は、昨日と打って変わってピーカンの日本晴れ! それだけでモヤモヤは吹っ飛んでしまう。やっぱ能天気な妙子だ。

 雄介とは普通に「おはよう」ができた。廊下で会った小暮先生はガン無視! あ、したのは先生のほうだからね。あたしは挨拶のきっかけとろうとして、ずっと先生の顔見てた。先生は、さりげに窓の外の空なんか見ちゃって、あれじゃ「おはようございます」は言えない。

 三時間目のつまらない日本史に腹が立つ。織豊政権の秀吉、たった5分で終わっちゃう。農民身分から関白へ=下剋上の代表、本能寺の変をきっかけに天下人へ、検地と刀狩。五奉行五大老の名前、文禄慶長の役。三行でおしまい。
 秀吉はチビだ。信長からは「猿」の他に「禿げネズミ」という呼び名ももらっている。肖像画をみるとなるほどと思う。こういう男の心情を語らなければ、誰も歴史なんかに興味もたないよ。

 なんで、朝鮮出兵だけ強調すんの? あれは、秀吉の誇大妄想ってだけでしょうが、それを日本人の歴史的性癖にまで拡大するのはどうかと思うよ。

 秀吉については、このエピソードが好きだ。

 小田原攻めのとき、家康と馬を並べて、ある坂にさしかかり、秀吉は馬を止めてしまった。
「いかがなされた?」と、家康。
「若いころに、針売りをしていて売れませなんでな、三日飯も食えずに、この坂を超えるのに丸一日かかりもうした」
「この坂をでござるか!?」
「越せねば飢えて死んでおりましたでしょう……そのころの儂が見えたような心地がいたしましてなあ」
「さようでございましたか……」
 家康は深々と頷いた。あの瞬間、家康は友情を感じたのに違いない。家康も人質ばかりの青春時代だった。友情を感じていなければ、その後の家康の忠勤と秀吉の信頼は説明できない。単なる騙し合いとしか描かない大河ドラマも、そっけない授業も間違っている。

 それは5分間で秀吉の一生が終わった時に起こった。

 非常ベルが鳴り、緊急放送が流れた。
――南に隣接する倉庫から火災発生。先生方は生徒を誘導してグラウンドに集合させてください。繰り返します……――
 南側の倉庫というのは、倒産した会社の倉庫で、体育館ほどの大きさがある。南側だから、グランドに隣接している。常識で考えて、グランドに集合することは、火元に近づくことで、避難のしかたとしては間違っていると思う。幸い風は北風だったので、火の粉はおろか煙もこなかったけど、大きな倉庫が燃えているのだ。どう風向きが変わるかもしれない。そんなに多い生徒じゃない。中庭集合が順当だったと思う。学校のマニュアルって、ほんと、どうかと思う。

 こんな大きな火事を見たのは初めてだ。火と言うのは人の心をざわつかせるものだと実感。

 避難し終えたころに、あちこちから消防車がやってきた。サイレンの音からして、20台以上来ている。消防士さんが十人ほど、プールが面した道路に向かって、外からプールの止水弁にホースを4本ばかり突っ込んだ。他にポンプ車も放水を始め、火は10分ほどで消えた。

 不謹慎だけど、もっと燃えればいいと思った。

 今まで感じたことがないくらい心が騒いでいる。火が消えたあと、猛然と黒い煙が立った。黒い煙は不完全燃焼の証拠。これにも心が泡立った。まるで自分の中の不完全燃焼のあれこれをみせつけられているよう。やがて煙は白くなり、三時間目のチャイムが場違いな長閑さで鳴ったときには完全に鎮火していた。

 あたしは一週間前のあることを思って心がざわついた。精一杯やってきた自信はあった。だけど黒い煙が立ち込めている。火事の記憶か一週間前のあのことへの心残りか判断がつきかねた。

 なんのことかって? それは、まだナイショ!
 

ジャンル:
小説
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